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『東西ベルリン動物園大戦争』

 久しぶりの更新です。ここ2週間くらい、お仕事でバタバタしておりました。ようやく一息つけ、ブログも更新できます。ホッ♥
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          『東西ベルリン動物園大戦争』(原題:Der Zoo der Anderen)
          ヤン・モーンハウプト/著
          赤坂桃子/訳、黒鳥英俊/監修
          CCCメディアハウス


すっごく面白かったです…!よく知られているように、戦後にドイツは二分されました。ベルリンも同様。西ベルリンは、東ドイツの中にぽっかり浮かぶ島となったことも知られています。ベルリンの動物園の最寄り駅「Zoo(動物園)駅」が西ベルリンの中央駅的な役割を果たしました。一方、東ベルリンでも1955年に「ティアパルク(Tierpark)」という動物園が作られます。東ドイツが国家の威信をかけて作ったものでした。まだまだ娯楽が少ない頃。動物園のない首都なんて、クリープのないコーヒーと同じ(古っ すみません)。首都の看板を掲げる以上、立派な動物園がないとねぇ。そんなワケで、どちらの動物園も実は国を背負っていたのです。そして意外と知られていないのは(実は私も知らなかった💦)このティアパルクと西ベルリンの動物園が互いをライバル視し、張り合っていたという事実。激しい冷戦(と舌戦)が動物園でも繰り広げられていたとは!!!この本では2つの動物園を中心に、戦後から現在に至るまでの「ドイツ動物園史」が楽しく、ユーモアたっぷりに語られています。また、その前史として戦争中の動物園についても書かれています。これがまたとても興味深いものでした。

 とにかく面白いエピソードが満載!ページをめくるのがもどかしくなるほど。この「面白い」というのは、lustig と interessant の両方の意味です。いい大人が…と呆れちゃうこともたくさんあったみたい。互いに相手を意識して拡張合戦を繰り広げたり、政治が介入して現場の人たちを振り回したり。両動物園とも歴代の園長さんがとても優秀でユニーク。そしてやたら人間臭い。だけどみんな動物が大好きだったんでしょうね。動物愛がハンパないのです。

 しかーし。時代は東西冷戦が激しかった頃。両動物園が、まるで東西ドイツの代理戦争の舞台になったかのよう。今でこそ笑い話と言えることも、当時は決して笑えない話だったんでしょう。特に東のティアパルクでは御多分に洩れずシュタージの監視下にあり、危険と背中合わせだった模様。そんな中、ヘラジカと一緒に亡命しようだなんて…(あ、ネタばれになっちゃうから自粛しなくちゃ💦)

 こうして東西ベルリン動物園史を読んでみると、冷戦時代のベルリンは異様だったと改めて思います。だけど、人間の醜い権力闘争や国家レベルでの意地の張り合いをよそに、動物たちはのんびりと暮らしていたのでしょう。「人間ってバカだなー」と思いながら。

 翻訳は赤坂桃子さん。語彙が豊富で素晴らしい訳です。おそらく、モーンハウプトさんの原文もとてもリズミカルでユーモアがあって楽しい文章なのだと思います。ドイツ人らしい黒いユーモアもちらほら。そんな持ち味がそのまま日本語に置き換えられたかのような見事な訳文でした。読みながら思わずくすっと笑ったり、「え?こんなことが??」と驚いたり。シュタージが迫ってくるあたりは、ハラハラドキドキしました。そんじょそこらのサスペンス物よりよっぽどハラハラします。

 監修の黒鳥さんは長く上野動物園や多摩動物園にお勤めで、その後もずっと動物たちと関わってこられた方のようです。各章の終わりに「動物園の歩き方」というエッセイが挟まれていて、それがまた楽しい❤ 動物愛とプロならではの知見がぎっしり詰まった素敵なエッセイです。

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 余談その1:ケネディ弟がベルリンを訪問した際、お土産に連れてきたよぼよぼハクトウワシ。なんとヴィリー・ブラントと名付けたんだそうな。当時ブラントは西ベルリン市長だったのです。東ドイツがこのネタに食いつき、「Willy sitzt hinter Gittern(ヴィリーは檻の中=ヴィリーは刑務所で服役中)」との見出しで揶揄する記事を書いていた模様。ブラントさんには申し訳ないけれど、ぷぷっと笑っちゃった。

 余談その2:1961年に壁ができるまで、東西ベルリンは比較的自由に行き来できました。そんなわけで、西ベルリンの住民も東ベルリンのティアパルクへ遊びに行っていたみたい。来場者数が人気のバロメーターとされてしまうせいか、両動物園の園長さんもお客さんを引き付けるために涙ぐましい努力をした模様です。

 余談その3:東西ベルリンにおけるパンダ狂騒曲。どえらい騒ぎだったみたいです。カンカンとランランが日本に来た時の騒ぎをリアルタイムで経験しているだけに、西ベルリンの騒ぎも想像ついちゃう。確かにカワイイもんなぁ…。それだけに、1頭がウィルス性疾患で亡くなったとき、市民はかなり悲しんだみたいです…。あのヴァイツゼッカー西独大統領も死を悼むコメントを寄せたらしい。


 …と、いろいろなエピソードが満載。「東西ベルリン動物園大戦争」オススメです~❤



 


by Alichen6 | 2018-10-28 20:35 | ドイツのこと

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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