『第二帝国』上・下巻

 「第二帝国」を読み終え、早く感想を書きたいな~とウズウズしていたのだけど、ちょっとバタバタしていたために遅くなってしまいました。すっごく、すっごく面白かった…!

『第二帝国』上巻「政治・衣食住・日常・余暇」
伸井太一 編著
齋藤正樹 著
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『第二帝国』下巻「科学・技術・軍事・象徴」
伸井太一 編著
齋藤正樹 著
小野寺賢一 著
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 二冊を合わせると鉄十字になるというデザイン性にも度肝を抜かれましたが(でもミリタリー偏重ということはありません!)、中身がぎっしり詰まっていて読了後の満足度もハンパない。写真も豊富、ところどころにギャグを織り交ぜ、「第二帝国」がどんな時代だったのかがユーモアと愛情💕たっぷりに解説されています。この本に書かれている中で、いたく共感したのが次の言葉:

「本書は、一般的知識と研究をつなごうとする試み」
「今から100年前のドイツ社会を想像するのは、21世紀の日本に生きる私たちにとって容易ではない。ただし、その過去を今なお存在する「モノ」を通じて、「いま、ここ(21世紀、日本)」とをつなげることができるかもしれない。そのような発想から本書は編まれている」

 そう、そうなのよ~それなのよ~!! しかもこの時代の専門家が書いておられるので、どれもきちんとした裏付けがあるのです。膨大な知識と分析、そして資料に基づいているので納得できます。

 私自身、モノから時代を読み解くというスタンスの本が大好きなのだけど(だから「ニセドイツ」も愛読書)、そういう興味もアリだということをこの本を読んで再確認しました。「時代の精神はモノに宿る」 - そう勝手に考えていたのだけど、それは決して的外れじゃなかったんだなと。国境は時とともにいくらでも変わるし、人の流れも考え方も変わる。民族だってどんどん移動していく。歴史の流れは決して止められない、だけどその時代に作られたモノは確実に残る。そしてそういったモノには、その時代の姿が刻印されている…     …なーんて考えながらページをめくりました。

 第二帝国は、それまでバラバラだった諸邦が統一され、今のドイツの土台ができた時代。各邦の伝統は残しつつも、少しずつ「ドイツのスタンダード」が出来つつあったのがこの本でよく分かりました。統一の過程を見ていくと、逆に連邦国家ならではの特色がくっきり浮き出てくるから不思議。昔からの強力な中央集権体制ではなかったがゆえに、今も色濃く残る地方色――。

 具体的に見ていくと、上巻では「政治・衣食住・日常・余暇」というテーマで、モノの解説を軸にしつつ様々な側面から第二帝国が分析されています。19世紀末から20世紀へと時代が移るにつれ、工業化が進み、人々が活気づき、社会も生活も近代化されていくのが手に取るように分かります。下巻のあとがきで、次のように書かれていました。「1951年、西ドイツで実施されたアンケートでは、「もっともよかった時代」をドイツ帝国時代と答える人が最大多数を占めた」「上下巻を通じて、「第二帝国=良い時代」とされた理由は提示できたかと思う」。すべてを読み終えてこの一文を読んだとき、深くうなずく自分がいました。ダイナミックな時代の流れ、より良い未来への期待、膨らみつつあるドイツ国民としての誇り… そんなことが伝わってきたから。ドイツ人が「ああ、あの時代はよかった(実際に経験した人は、1951年の調査といえど少数派だったでしょうけれど)」と思い返すのも理解できます。

 下巻では「科学・技術・軍事・象徴」とのテーマで、有形無形の「第二帝国」が語られています。細かいところまで徹底的にこだわるドイツ人気質。そうしたドイツ人気質が、こうした技術を生み出したんだな~と思うと同時に、こうした技術革新がまたドイツ人気質を熟成させたんだ…などと、「卵が先かニワトリが先か」みたいなことも考えました。


 ところで、先ほどご紹介したあとがきには続きが書かれていました。「ただし本書の下巻では、この近代の高揚感の後には「巨大な死」としての戦争があり、それを物心両方が推進したこともまた書き出した」 そうなんですよね。まさにこの「高揚感」に誰もが浸ったのち、ドイツは二度の大戦を引き起こして破滅へと向かった。この時代は近代化への幕開けであり、同時に破滅への序章でもあったのだなと。そういったこともきっちり書かれています。負の面も決して忘れてはいけないということを読了して改めて思いました。

 …というワケで、「第二帝国」上下巻、とってもディープでとっても濃ゆ~い必読の書





by Alichen6 | 2017-12-22 16:36 | ドイツのこと | Comments(0)

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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