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Alltag in der DDR ~ 東ドイツの日常

(1つ前の日記の続きです)

 で、その「Kulturbrauerei」の博物館でやっていたのが特別展「DDR(ドイツ民主共和国、旧東ドイツ)の日常」。すっごーーーーーく面白かったです。もしかすると、シュプレー川沿いにある「DDR博物館」より面白かったかも?

 全体的に感じられたのは、批判的な目線。当時を懐かしむという雰囲気ももちろんあったのですが、どちらかというと自虐的な内容が多かったような…。SED(ドイツ社会主義統一党)によるお決まりのスローガン、行き詰まりを見せる計画経済、卑屈なまでのソ連崇拝、西側資本主義国との微妙な関係…。

 案内してくれたのは、30年来の友人で旧東ドイツ出身の女性。会うのは実に28年ぶり!竹を割ったような性格で(ドイツに竹は生えてないけど)、89年の壁崩壊前はデモにも参加していたとのこと。彼女と回っていると、「ああ、この電燈、うちにもあった!」とか「ああ、この工作機械、私も使える!私の最初の職業は機械工だったのよー(←さすが元共産圏の女性!)」とか、リアルな解説が聞けて2倍楽しかった!

Kulturbrauerei 博物館のサイトは → コチラ



では「DDRの日常」展の始まりです。
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まずはエ~リヒの笑顔から。「計画の実現は我らの義務!計画を上回ることは我らの名誉!」だそーです。計画経済の理念なんでしょうね…。
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いきなりDDRマークがお出迎え。確か、麦の穂は農業を意味し、コンパスは英知を意味し、ハンマーは労働を意味したハズ。
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DDRワールド、炸裂!
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琺瑯の看板たち。東ドイツ用語である「Plasta(プラスチックのこと。西ドイツでは言わない言い方です)」の文字も見えます。
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なんと! テントをのっけたキャンピング:トラビ(トラバント)
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「何が何でも外貨を!」 慢性的な外貨不足に悩むDDRは、なりふり構わぬ外貨獲得に乗り出しました。輸出用の製品に力を入れた結果、国内は品物不足…(涙) 
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矛盾の塊、Intershop! 国民が大事にため込んでいる外貨を吐き出させるため、そして観光客から外貨をせしめるため、外貨でしか買い物ができないお店が登場。1988年の売り上げは11億2,100万西ドイツマルク。7億西ドイツマルクの純益ですって。スゲー。そして当然、売っている品物は贅沢な化粧品やコーヒー&ココアなど、東ドイツ国民にとっては垂涎のお宝商品ばかり。
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仰天の通販、Genex。西ドイツの国民が東ドイツの親戚や友人にプレゼントするための通販カタログで、外貨でしか注文できません。Wiki によると、9割が東ドイツ製の商品だったそうですが、本国なら何年も待たされた商品(典型的なのが車!)も、Genex なら待たずに入手できたとか。さらに、1割は西側の華やかな商品。西側にそういった「親切な親戚」を持たない東ドイツの人たちの間で不満が高まる結果に。
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Genex通販のカタログのタイトルは「DDRへの贈り物」。なんというか、「自分たちの国民への贈り物を」と、他国の通貨でしか買えないカタログを発行しちゃうあたり、プライドというものはなかったんだろーか… 物乞いスレスレ。
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「東ベルリンから来た女」の中で、西側の男性と関係を持った女性が登場しましたよね。彼女は情事のあと、ベッドの上で通販カタログを見ながら指環を選んでいましたが、あれは今から思うとGenex だったのかも。



「グッバイ、レーニン!」で主人公アレックスが手にして喜んだ「Tempo豆」シリーズも見えます。テンポエンドウと、テンポレンズ豆。「Tempo」ってドイツ語では「迅速」「クイック」という意味なので、おそらく水につけると早く戻るんじゃないかなぁ。
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西の「ハンバーガー」にあたる「グリレッタ」。友人に、「ホントにそう呼んだの?」と聞いたところ、友人は「あったぼ~よ!」 彼女は、この訳語がピッタリなキャラなのです。
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西の「ホットドッグ」にも似た「ケットヴルスト」。同じく、「ホントにそう呼んだの?」と聞きましたら、やっぱり彼女の反応は「あったぼ~よ!」
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友人がこれを見て、「けっ  ひっでぇスローガン」と小声で吐き捨てるように言っていたのをワタシは聞き逃さなかった…!「一緒に働こう、一緒に計画しよう、一緒に(機械を?)操縦しよう」
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そしてソ連へのおべっかも当時はすごかった!スローガンは、「ソ連から学ぶということは、勝利を学ぶということだ」
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 友人が最後に言った言葉が印象的。「今の社会にもイロイロ問題はあるけれど、過去に戻るのだけは絶対にカンベン」。

 旧東ドイツなどの旧共産圏のデザインは日本でも結構人気がありますよね。実際、ベルリンでは今も旧共産圏のグッズが蚤の市で売られていたりします。かくいうワタシもDDRグッズが大好きです。だけどね、それを「クール」だと言っちゃうのは現実を知らないからだ、当時を知らないからそんなのん気なことが言えるんだ、なんて改めて思い知らされました。旧東ドイツのグッズを見ながらはしゃぐ私に対して友人は、「へぇ~ なんでこんな忌まわしい物が好きなの?」なんて言っていましたので…。私も恥ずかしくなったのでした。過去を懐かしむ気持ちというのは誰にでもあるけれど、それは「いい思い出」に対してのみ。息の詰まるような監視社会に暮らし、慢性的なモノ不足に悩んだ彼らからすると、過去というのは決して「いい思い出」ばかりではないのでしょう。私の友人も、実の兄弟(上と下に4人くらいいたそうです)の1人がシュタージのIM(非公式協力者)だったのではないか、と疑っていました。それを知るのが怖いから、シュタージの文書の開示申請はしていないって。
by Alichen6 | 2015-08-27 09:28 | ドイツ珍道中

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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