白水社『ドイツ語副詞辞典』
2014年 12月 31日
実はこのクリスマスに素敵なプレゼントをいただいてしまったでございます。例によって、ここでお見せしてよろしいでしょうか?
じゃじゃーーん!!!
白水社から出ている『ドイツ語副詞辞典』です。お書きになったのは、ドイツ語界ではとても有名な岩崎英二郎先生。私が愛用している小学館独和大辞典を編集なさった先生です。独和大辞典が世に出たときは、「とうとうここまでの規模の独和辞典が出てくれた…(ToT)」とヒ●キ感激したものです。しみじみ。
で、さっそくいろいろ引いてみました。とにかくスゴイ…! 何がスゴイかというと、用例がとっても豊富に挙げられているのです。翻訳をなさっている方は皆さん同じ思いをされていると思いますが、言葉の本当のニュアンスをつかむには、日本語の語義を見るだけじゃ足りませんよね。用例をいくつか読んで、「ナルホド、こんな感じかぁ…」とイメージをつかむって感じ。曖昧な言葉ほど、用例が豊富にあるほうが助かります。
しかもドイツ語って副詞が難しい。以前、ある日本人の先生の立派なドイツ語を読んで仰天したことがありました。スゲー! 何がスゲーって、副詞使いが絶妙だったのです。日本語だと2文に分けてしまいそうな内容でも、~weise とか ~mässig などの副詞をたった1語使うことで文章が1つで済んじゃう。そしてこの副詞使いはE難度かF難度くらい難しいんですよね…。日頃、メールや手紙で「und... wenn... aber..」と、平坦な文章をダラダラ連ねているだけのワタクシにとって、絶妙な副詞使いというのはかなりハードルが高い。一方、簡単な副詞もまた厄介。ヒジョ~に奥が深いんですよねぇ…。
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ちょこっとだけ内容をご紹介しちゃいますね。基礎的な副詞の代表格、schon を引いてみました。ぬゎんと!この単語だけで14ページくらいある!以下、説明だけ引用いたしますね。この説明のあとに、膨大な量の例文が続くのです。そして注意すべき点や、補足などもびっしり書かれています。
schon:
Ⅰ①【時間的に】すでに、もう
②【譲歩のシグナルとして用いられて】(…である)とはいえ
Ⅱ①【焦点となるべき文成分(時を示す語句)の直前、まれに直後に置かれて。文中ではアクセントなし】(…の時点で)すでに
②【焦点となるべき文成分(時・量などを示す語句)の直前、まれに直後に置かれ、時・量などに関して、特定の段階がすでに到達されていることを示して。文中でのアクセントなし】すでに
③【焦点となるべき文成分の直前、または直後に置かれ、ときにalleinを伴って。文中でのアクセントなし】(…だけでも)すでに
④【先行する発話を受け、schon gar nicht (まれにschon gewiss nicht)の形で。焦点となるべき文成分の直前または直後に置かれて】 まして…にいたっては論外である、いわんや…では全然ない
Ⅲ①【平叙文に用いられ、陳述内容がかならず実現するであろうという、話し手の確信・自信・自負などの気持ちを反映して。文脈や場面によっては、聞き手に対する励まし・警告などのニュアンスを帯びることもある。文中でのアクセントなし】
②【平叙文に用いられ、先行する陳述内容の正当性を、話し手が留保つきながら一応は認める気持ちを反映して、文中でのアクセントはあったりなかったり】
③【あらかじめ否定的名答えを前提とする、修辞疑問的な性格をもつ補足疑問文に用いられ、陳述内容についての話手の否定的な気持ちを反映して。文中でのアクセントなし】
④【要求文に用いられ、要求の早急な実現を期待する話し手の気持ちを反映して。文中でのアクセントなし】
⑤【従属接続詞 wenn に導入される条件文に用いられ、「どうせ…するからには(いっそのこと)」という話し手の気持ちを反映して。文中でのアクセントなし】
⑥【平叙文に用いられ、先行する発話を受けて、それに基づく帰結として「(どうせ…するからには)いっそのこと」という話し手の気持ちを反映して】
⑦【述語動詞を省略した平叙文に用いられ、先行する発話を受けて、その陳述内容の一部に修正を加えようとする話し手の気持ちを反映して。文中でのアクセントあり】
(以上、部分的ですが引用終わりです)
・・・こうして説明だけ抜き書きすると分かりづらいのですが、例文を読むと「ナルホド~」と思えます。聞いた話によると、こうした用例は岩崎先生が長年にわたってコツコツと書きためてこられたものだとか。頭が下がりますね。。。ほにゃくをやっておりますと、ちょっとしたニュアンスの差がイマイチつかめないことがあるのです。そんなときにせっせと引いて、正しいニュアンスをつかめるようになりたいな。すでに体の一部となっている和独大辞典同様、愛用したいと思います。