クリスタ・ヴォルフ原作 東ドイツ映画「引き裂かれた空」
2014年 11月 10日
原作はクリスタ・ヴォルフの小説。これは「引き裂かれた空」というタイトルで日本語訳が出ているようです。これを東ドイツ映画界で巨匠とされるコンラート・ヴォルフ監督が映画化。「ヴォルフ」つながりですが、別に夫婦ではなく、単なる偶然みたいです。(余談ですが、コンラート・ヴォルフ監督は、「顔のない男」と異名をとったDDRの大物スパイ、マルクス・ヴォルフの弟です)
<簡単なあらすじ>
時代は1961年。壁が建設される直前の東ドイツが舞台です。19歳のリタはパーティでハレ出身のマンフレートと知り合い、恋に落ちてしまいます。彼女はマンフレートの屋根裏を間借りすることになり、大学の勉強の傍ら、マンフレートの父が勤める電車の車両製造工場に勤め始めます。一方、父とうまくいっていないマンフレートは実家暮らしや刺激のないハレでの生活に嫌気が差していました。彼は博士論文を書きあげると、自分の能力を生かす道を模索し始めます。そして単身で西ベルリンへ行った彼は、もう戻ってきませんでした。
ハレでマンフレートを待ち続けるリタ。そんな彼女の元に、マンフレートから手紙が届きます。リタは呼ばれるままに西ベルリンへ向かいます。ところが同じドイツ語を話す地であるにもかかわらず、彼女は強烈な違和感を覚えます。ここは自分のいる場所ではないと悟ったリタは、傷心のまま1人でハレへ戻るのでした…
・・・とまあ、こんな内容です。原作だけでなく、映画も当時、かなり話題になったとのこと。西ベルリンのシーンでカフェ「KRANZLER」のロゴが大きく写し出されるのが印象的でした。また、もくもくと煙を吐き続ける工場の映像がなんとも言えない陰鬱な雰囲気を伝えています。この作品は1964年に公開され、翌年には西ドイツでも上映されています。ところがその後、当局の判断により上映禁止に。「Republikflucht(共和国からの逃亡=東ドイツから逃げること)」を助長する恐れがあるとの理由でした。なんででしょう?リタは西ではなく東を選択したけれど、映像で見ると西は光にあふれていて明るく、東は重苦しい。それが当局のカンに障ったのでしょうか。
とにかく、der ungeteilte Himmel という言葉を聞いて、この映画を思い出してしまった次第です。ああ、ホントにベルリンの壁は悲劇の象徴でしたね…
トレーラーです ↓ か~な~り~重苦しい雰囲気です。当時の東ドイツの雰囲気をダイレクトに伝えてくれる映像ですね。