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ドイツ映画『都会のアリス』

 先日、「バグダッド・カフェ」を久しぶりに見たら、良さが分かった、といった内容のことを書きました。その際にコメントをくださった方が、「久しぶりに見ると良いと思える作品」の例として「都会のアリス」を挙げていらっしゃいました(ありがとうございました!)。私も「都会のアリス」に感動したクチです。若かったころは「ニュージャーマンシネマ」の監督作品にいま一つ興味がわかず、敬遠していたのでした。このトシになってから見ると印象が違う…。すっかり放置状態の映画ブログのほうに、この作品の感想を書いておりましたので、こっちに転載しちゃいますね。もしご興味がありましたら、是非。

************************* 以下、映画ブログからの転載です ********************


ドイツ映画『都会のアリス』_e0141754_219245.jpg



『都会のアリス』(原題:Alice in den Städten)、1973年
Wim Wenders (ヴィム・ヴェンダース) 監督
Veith von Fürstenberg (ファイト・フォン・フュルステンベルク)、ヴィム・ヴェンダース 脚本
Rüdiger Vogler (リューディガー・フォーグラー) フィリップ・ヴィンタース
Yella Rottländer (イェラ・ロットレンダー) アリス・ファン・ダム
Lisa Kreuzer (リザ・クロイツァー) アリスの母

 ジャーナリストのフィリップ・ヴィンターは、旅行記を執筆するためにアメリカを旅行中。ところが、広大なアメリカはどこを見ても同じに見え、個性が見いだせない。モーテルで見るテレビ番組も空しいだけ。ポラロイドカメラの写真だけが増えていき、肝心の旅行記はどうしても筆が進みません。その結果現地のエージェントの怒りを買い、フィリップはドイツへ戻ることになります。ところがドイツの空港はストライキ中。仕方なく、翌日のアムステルダム行きに乗って帰国することに。そんな折、同じくドイツへ帰国しようとしていた母娘と出会います。母は娘をフィリップに託したまま、姿を消してしまいました。途方に暮れるフィリップ。9歳の少女アリスと2人でアムステルダムへ戻ります。アリスに振り回されるフィリップでしたが、いつしか彼の心の中に変化が芽生えます。それまではどちらかというと投げやりで、生きる意味を見失っていたようなフィリップが、アリスに情を動かされたのです。面倒なことは嫌いだったはずなのに、この少女を見捨てておけなくなるのでした。2人は車を借り、アリスの記憶を頼りに祖母宅を探しに出かけます…。

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 ヴィム・ヴェンダース監督によるロードムービー3部作のうちの1作目。ウィキペディアによると、『即興撮影を用いたヌーヴェルヴァーグ風であり、随所に監督がファンだと言う小津安二郎へのリスペクトが感じられる』んだそうです。ほにゃく犬個人の感想で大変恐縮ですが、それまでどちらかというとニュージャーマンシネマ系の映画は敬遠しておりました。が、この作品はとっても分かりやすかったです。アメリカに対する羨望と失望。傷心のままアムステルダムに降り立つと、そこがまた彼にとっては異質の町。大都会って、そこに溶け込む人にとっては刺激的で魅力のある空間だけど、どうしても溶け込めない人間からすると、とっても冷たくて無機的。モノクロの映像が、彼の空しい気持ちを如実に物語っているよう。また、ルール地方を車でドライブするシーンが映りますが、工業地帯特有のもの悲しさがあるのです。何となく「かつて繁栄した」感が漂い、寂しげで独特の雰囲気。母から見捨てられかけ、心細く思う少女の心情と重なります。

 モノクロだけあって、全体的に無力感とか、寂寥感みたいなのが漂います。そんな中で、“身を置く場所がない”男と少女には共通する何かがあります。言葉で表すのは難しいのですが、2人の間に少しずつ信頼関係とか、共通意識みたいなものが芽生えてくるのが感じられました。アリス役の少女が好演。
こちらのサイトの解説がとっても分かりやすくてよかったです → コチラ 良作だと思います。お薦めいたします。
by Alichen6 | 2014-07-12 21:13

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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