中公新書「ナチスと映画 ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか」

 先日読んだ本が面白かったので、ご紹介しちゃいます~。読みやすい文章なので、あっという間に読めました♪ 

e0141754_0224790.jpg中公新書『ナチスと映画 ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか』 飯田道子著

 大昔ご紹介した本「ナチ娯楽映画の世界」(瀬川裕司著、拙ブログの日記は → コチラ)ともカブる内容でして、ナチ時代に盛んに作られた娯楽映画も紹介されております。「ナチ娯楽~」でもゲッベルス宣伝相の言葉が引用されておりましたが、本書でも次の個所が引用されていて興味深く読みました。(以下、引用いたします)
『通りが暗ければ暗いほど、我々の劇場と映画館は明るい光のなかになければならない。時代が厳しければ厳しいほど、芸術は人の心の慰めとしていっそう輝かしくそびえていなければならないのだ』(以上、引用終わり)

 映画をプロパガンダのための強力な手段として活用しただけでなく、国民の不満をそらす手段としても最大限に利用したんだなーと改めて思いましたです。もちろん、娯楽映画と言えどもナチの独裁体制下。当然、厳しい検閲にパスした作品だけが上映を許されました。この「検閲」ってドイツ語では Zensur と言いますよね。でもゲッベルスはあえて「Prüfung (検査)」という言葉を使ったそうです。以下、再びこの本から引用いたします。『そのような言葉の使用にかけては、ゲッベルスは天才的な資質を備えていた』 ナルホド。分かるような気がします。

 なお、私が特に面白いと思ったのは、時代によって変わってきたヒトラーのやナチスの描かれ方についての章でした。

「笑い」の対象としてのヒトラー ・・・ 典型的なのが、チャップリンの『独裁者』。ヒトラーを憎悪の対象としてではなく、滑稽に描いて笑いの対象にすることで痛烈に批判しようとする意図が見えます。この作品の構想が練られた頃は、第二次大戦の開戦前だったということもあり、アメリカにはまだまだ親独派も多かったとのこと。ところが第二次大戦がはじまり、ナチの蛮行が明らかになるにつれ、『独裁者』に寄せる期待はふくらみ、拍手喝さいで迎えられたとのことです。ただ、チャップリン自身も後に認めているそうですが、こうして笑い飛ばせるのはナチの本当の姿(強制収容所での虐殺行為など)を知らなかったからできたことだと。知っていれば、笑ってはいられなかっただろうと本人も認めているとのことでした。

「悪の定番としてのナチス」 … 同書によると、アメリカでは第二次大戦後も戦争映画が盛んに制作されたんだそうです。第二次大戦後も朝鮮戦争や冷戦が続き、「強いアメリカ」「アメリカ=正義」といったイメージ作りにうってつけだったのが戦争映画だったとのこと。

「一人の人間」としてのヒトラー … 初めて「一人の人間」として等身大のヒトラーを描いたのは、ソクーロフ監督の「モレク神(1999年)」だそうです。この映画、それほどメジャーではないのですが、なぜか知っているワタシ。これもDVDになっていたんですね。知りませんでした。狂気の独裁者や、悪の権化といったイメージではなく、気弱になって愚痴をこぼしたり、ハイテンションになって周りを困惑させたりと、人間的なヒトラーが描かれていたように記憶しております。これに続き、話題となったのが「ヒトラー~最期の12日間~」。この映画はつい最近なのでよく覚えております。秘書トラウデル・ユンゲを思いやる姿や、不安で揺れ動く姿など、人間的な面が描かれ、公開当時から話題になっておりました。

・・と、チョ~簡単に書いてしまいましたが、他にもいろいろ興味深いことが分かりやすく書かれておりました。
 
Commented by なすび at 2010-12-31 07:48 x
今年もたくさん、お世話になりました。m(__)m
人間としてのヒトラーについて(きちんとした資料を踏まえて)書かれたものを初めて読んだのは、デビッド・アーヴィングの『ヒトラーの戦争』(1~3 ハヤカワ文庫)でした。誰しも人間である以上、何かしらの人間性があるのは当然なのに、悪の化身としてステレオタイプされたイメージに馴れ切っていた自分には衝撃でしたね。(アーヴィング氏は最近ではすっかり、トンデモ学者になってしまった感がありますが・・・・)
日本におけるナチズムの影響については、『ヒトラーの呪縛』という本も面白いです。ガンダムとか、宇宙戦艦ヤマトのデスラー総統などのことも入っています。
最近の本では、阿部良男さんの『ヒトラーとは何者だったのか? 厳選220冊から読み解く』(学研M文庫)というのも面白かったです。書評を兼ねつつ、ヒトラーの分析を試みています。
Commented by Alichen6 at 2010-12-31 11:41
★なすびさん、コメントありがとうございます~。今年も本当にいろいろありがとうございました。ナチの時代に疎い私がこんな日記を書くのもお恥ずかしいのですが、「おお!」と思ってしまったのでついつい書いてしまいました。「ヒトラー 最期の~」の公開時は、ドイツ人が等身大のヒトラーを映画で描いた!ということで話題になりましたよねー 書籍の世界でも同じなんですね。確かに、ナチの犯罪をヒトラー個人の責任にしてしまえば、実は簡単なのかも。悪の化身であり、悪魔の使い、化け物のようなヒトラーがしでかしたことなのだと。でもヒトラーも一人の人間であったはずですし、彼一人ではここまでのことをできたはずもなく・・・。本書では、これらを単なるヒトラーやナチの犯罪としてでなく、人生共通の問題として共有し、後世に渡って考えていくためにも、人間ヒトラーの分析は欠かせないだろう、といったことが書かれておりました。「ヒトラーとは何者だったのか?」は面白そうですね。書評を書かれましたら、是非教えてくださいねー 拝見したいです。(長いので2分割いたします~)
Commented by Alichen6 at 2010-12-31 11:41
★なすびさん(続きです)
ところでなすびさん、昨日がお誕生日だったんですね。すみません、うっかりしておりました。遅れてしまいましたが、おめでとうございます♪ 愛してやまないご家族と楽しいお正月をお過ごしくださいね❤ 来年もどうぞよろしくお願いいたします。またいろいろ教えてくださいませ♪
Commented by spatz at 2010-12-31 19:10 x
あれあれ・・大みそかってなんですか?大掃除ってなんですか?おせち料理って何ですか?orz。てなわけで、ずうずうしくも便乗して、なすびさん、お誕生日おめでとうございます!を言わせてくださいませーー♪本文と関係なくてすみません。
Commented by なすび at 2011-01-02 08:31 x
ありちゅんさん、spatzさん、ありがとうございました。
元日は年賀状をやっとこさ出したほかは、「お年玉を使いたい」という子供たちに根負けして、近所のショッピングモールに行きました。そこの本屋にて、熊谷徹氏の新作『あっぱれ技術大国ドイツ』(新潮文庫)を見つけたのは新年早々、ラッキーでした。
今年もよろしく、お願いします。
Commented by Alichen6 at 2011-01-02 19:17
★なすびさん お疲れ様です~ 熊谷さんの新作を早速お買いになったんですね!私も気になっていました。いつもmixi でお世話になっていますし、ブックオフやアマゾンのユーズドではなく(←毎回こればかりですが)、書店で購入しようと思っています^^
Commented by Alichen6 at 2011-01-02 19:17
★なすびさん、「コメントありがとうございます」を書き忘れました・・・すみません!今年もどうぞよろしくお願いいたします。
by Alichen6 | 2010-12-30 21:23 | ドイツ映画 | Comments(7)

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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