人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」

「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」_e0141754_13352374.jpg 本のご紹介です。熊谷徹著「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」。戦後の賠償問題や歴史認識について、とかくドイツと比較されがちな日本なのですが、実際ドイツがどのような形で過去と向き合ってきたのか、何となく知ってはいたものの具体的には知りませんでした(恥) これで「ドイツ語のほにゃくしてますっ」と言うのはあまりにも恥ずかしいと思い、この本を購入して読んだ次第です。学術書と違い、多くの人に分かりやすいよう、写真も多く盛り込んでコンパクト説明されておりますのでワタシでも理解できて助かります。1)政治の場で 2)教育の場で 3)司法の場で 4)民間の取り組み 5)過去との対決・今後の課題 とテーマごとに分けてあるため、様々な角度からドイツの取り組みを知ることができますです。無知をさらけ出すようで恥ずかしいのですが、3の「司法の場で」は驚きました。司法の戦争責任が全く問われていないという事実。(不当判決を下した裁判官が戦後起訴され、法廷の前に引き出されたことはあったそうですが、いずれも無罪判決を下されたとのこと。)ドイツの大半の裁判官が『公平の原則を放棄して、ヒトラーへの忠誠を誓っただけでなく、死刑判決などを通じ、反体制派やナチスの政策に従わない市民の弾圧に、重要な役割を果たした』と指摘し、大きな反響を巻き起こしたという本が同書の中で紹介されておりました。著者熊谷氏も指摘していますが、私も「白バラ」裁判でひどい判決を下したフライスラー裁判長を思い出しました。映画「白バラは死なず」や「白バラの祈り」でも描かれておりましたが、狂信的なまでにナチを崇拝する同裁判長は、人民法廷においてとても裁判とは呼べない偏った「見せしめ裁判」を行いました。被告を頭ごなしにどなりつけ、あまりに高圧的な態度は見ていて絶句しちゃいます。この裁判長は戦争中に空襲で死亡しております。でも、仮に戦後まで生きていたらどうなったのでしょうか・・・。

 これ以外にも印象深いと思ったことが2つ。1つは東ドイツ時代の取り組み。共産主義の東ドイツは、資本主義との対立を全ての尺度としてしまったため、戦争責任をすべて西側に押し付けてしまったそうです。当然、東ドイツの戦争責任はあいまいのまま。共産主義者がナチと戦ったことばかりが強調されていたため、国民1人1人が過去を心に刻むということがなされなかった模様です。

 そしてもう1つは最後の章に出てくる『ドイツ人は「被害」を語ることができるのか』の項。一(いち)ほにゃく犬が偉そうに書くのは気が引けるのですが、WW2を扱った映画やインタビューなどに触れておりますと、「ドイツの一般市民もまた、ナチの被害者だった」「赤軍の蛮行(具体的にはレイプなど)に市民は相当苦しめられた」「ドレスデンなどの空爆によって、女子供まで無差別に殺された」といった論調をたびたび耳にするような気がしておりました。「えっ いいのかな~ こんなこと言って」とよく思っておりましたが、この章を読みますと、実際にドイツ統一後は教科書でも微妙な変化が現れてきており、ドイツ人が被害を語る著書も次々と出版されている模様です。私の気のせいじゃなかったのね。同書から一部、引用させていただきますね:
『NGO「償いの証」のシュタッファ氏は、「ドイツ人が被害者でもあったと語ることは許されるべきです。だが、ドイツ人が被害を受けた原因は、ドイツが戦争を始めたことにあるということを強調するべきです」と語る。ドイツでは、世代の変化につれて、被害者論が強まる可能性がある。この流れにどう対応し、過去との対決を続けていくかは、ドイツ人が背負った大きな課題である』(以上、引用終わり)
by Alichen6 | 2009-05-09 13:35 | ドイツのこと

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


by Alichen6
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31