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チェコ映画「英国王給仕人に乾杯!」

 この週末から公開されているチェコ映画「英国王給仕人に乾杯!」を観てきました。仲良くしてくださっている映画ライターさんが勧めてくださった映画です(ありがとうございました!)。すごく面白かった・・・!もうサイコー!!

「英国王給仕人に乾杯!」公式HP → コチラ

 時代は1963年ごろ。場所は社会主義国であるチェコスロヴァキア。初老の男性が刑務所から出所し、そのままズデーテン地方へ。かつてドイツ系住民が多く住み、ナチ・ドイツの時代に併合されてしまった地方です。この物語は主人公ヤンの出所後の生活と回顧シーンで構成されております。ヤンの人生はビールの給仕で始まります。人一倍小柄なヤンでしたが、大きな野心を抱いていました。「いつか百万長者になり、ホテルのオーナーになってやる」 

 本人の言葉にも出てきましたが、彼の人生は「ドンデン返し」の連続。禍が転じて福となったり、幸福の絶頂からいきなり奈落へ落ちたり。人一倍小柄なヤンの運命は、大国に挟まれ、運命に翻弄される小国チェコの悲哀そのもの。そんなときでも、まったく表情を変えないヤン。野心があるくせに、うまくいかなくても動揺しないところがワタシ的にツボでした。そんなヤンも給仕人として着々と出世していきますが、彼の運命を大きく変えたのがナチの侵攻。彼はズデーテン出身のドイツ系住民リーザと結婚し、「アーリア系スラブ人(確か、こう字幕に出ていたような・・・記憶違いでしたらすみません)というビミョ~な立場になります。

 収容所送りとなったユダヤ人の高価な切手コレクションを妻が持ち帰ることにより、戦後ヤンはひと財産を築きます。昔からの夢が実現するまであと一歩、というところでヤンは捕えられ、刑務所へ。

 こうして15年弱の刑期を終えて出所する現在のヤンとなるのですが、ネタバレになりますので詳しいことは伏せておきますね。

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 観終わった感想は・・・とにかく「お見事!」。随所で監督の技が光り、観る者を飽きさせません。小道具も非常に手が込んでおり、監督のこだわりが伝わってきます。日経新聞の映画評では「小粋でおしゃれ」「筋金入りの映画ファンを微笑ませる工夫が随所に仕掛けられた、職人芸の逸品」(日経新聞2008月12月20日夕刊より引用)と絶賛されていましたが、まさに同意見です。とにかく監督のセンスがあちこちにちりばめられ、とても粋なんです。と同時に、か~な~りシニカル。戦前は娼館だった建物をナチが「優生学研究所」に転用。優秀なアーリア人の血を残すためにアーリア人の男女を「交配させる施設」となります。ドイツが優勢だった頃は、その館のプールで金髪碧眼のアーリア人女性が全裸で泳いでいます。ところがドイツが劣勢となると、傷痍軍人たちがそこで泳ぐようになります。手足を失った男性たちが泳ぐシーンはかなりシニカルですが、そのシーンによってドイツが敗戦間近であるというのが分かる仕掛けなのです・・・。

 ナチに対する辛辣な批判を盛り込んでいるわけですが、決してナチの将校たちを残虐で醜く、非人間的な行為を繰り返す人物としては描いていません。あくまでも淡々。それでも、痛烈な批判精神が伝わってきます。このあたりの手腕はさすがだと思いました。

 また、官能的なシーンがちょくちょく出てくるのですが(小さくて見た目もイマイチなのに、ヤンはなぜか娼婦にモテます)、それがとっても官能的なのに下品でなく、どぎつくもない。女性が見てもオッケ~。昨今、露骨な映像が巷にあふれていますが、大人のシーンはかくあるべきだと感心いたしました。

 ・・・と、ワタシったら相変わらず支離滅裂ですが、とにかく面白かったです。2時間があっという間でした。出演者の演技がすばらしいのです。セリフがなくとも、表情だけですべてが伝わってきます。ドイツに興味がある方なら、絶対に楽しめると思いますよ~。なお、字幕はベテランの松岡葉子さんでした。

↓ ドイツ語版の予告編です。日本語版の予告編はHPで観られます♪

by Alichen6 | 2008-12-22 15:55 | つぶやき

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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