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『ヒトラーの贋札』(原題:Die Fälscher)

 年初から公開中の「ヒトラーの贋札」を見てきました。アカデミー賞の外国語映画賞を受賞したということで、さぞかし混んでいるのでは・・・と思ったのですが、朝一番の回だったこともあり、結構すいておりました。

<簡単なあらすじ>
 ユダヤ人のサリーは天才的な腕を持つ印刷工。その技術を生かして偽札や偽造パスを作り、その名を世界に知らしめていました。しかしそんなサリーもお縄となり、強制収容所送りとなります。そしてほかのユダヤ人収容者と同様、過酷な労働を強いられ、仲間が次々と死んでいく中で屈辱と恐怖の日々を送っていました。ところがある日突然、ザクセンハウゼン収容所に移送されます。偽札を流通させることで敵国の経済に打撃を与えようとする「ベルンハルト作戦」のためでした。

 同じ印刷工の収容者ブルガーはサボタージュや団結をサリーたちに呼びかけ、ナチスに抵抗しようと試みますが、サリーはおとなしく偽札を作ることで少しでも生き延びる道を選びます。彼らが収容所内の作業所で作ったポンド紙幣は見事イギリスの銀行の検査をすり抜け、その精巧さを証明することになります。次に作るのはドル紙幣。ところがブルガーのサボタージュにより、なかなか完成に至らないまま時が過ぎていきました。

 完成を急ぐナチス側はサリーたち印刷工に圧力をかけるようになります。サボタージュを続けるブルガーに賛同できないサリーでしたが、正義を全うしようとする彼の主張に多少なりとも共感を覚えるのでした。結核を患う若いユダヤ人収容者コーリャを気遣い、ほかの収容者とも仲間意識が芽生え、サリーは自分だけ生き残ればよいとは思えなくなります。しかし運命は過酷でした…

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 監督は「アナトミー」「アナトミー2」などで知られるシュテファン・ルツォヴィツキー。この監督はドイツ人ではなく、オーストリア人だったんですね。私ったら今回初めて知りました。てっきりドイツ人かと。主人公サリーを演じたのはオーストリアの人気俳優カール・マルコヴィッチ。実はこの俳優さんの出世作をごく最近見ることがありました。だもんでこの映画を観るのを楽しみにしていたのです。出世作となったドラマでの役柄は「お人好しで少々ヌケたところのある刑事」。このイメージが強かっただけに偽札造りの悪党には見えませんでした・・・。ブルガーを演じたのはドイツの人気若手俳優アウグスト・ディール。ちょっと神経質かつ繊細で、気難しい若者を演じさせればピカ一ではないかと思います。親衛隊将校を演じたのは、「イェラ」「厨房で逢いましょう」でも出演したデーヴィト・シュトリーゾフ。この人も最近、ちょくちょく見かけるような気がします。

 「アナトミー」のときも感じたのですが、ルツォヴィツキー監督はセットの細部までこだわる監督さんのようです。小道具一つ一つに至るまでおそらく正確な時代考証のもとに作られたのではないかと思われます。ついつい細かいところに目が行ってしまいました。ベッドのスプリングってこんなだったのね、とか、偽札の原版ってこうやって作るのね、とか。実話をもとにしているだけに話はリアリティに満ちています。収容者たちの言動に目を光らせるカポ(kapo:強制収容所でほかの囚人を監督する囚人)の非情な振る舞いに私まで腹を立て、収容者が殺されるシーンでは思わず目をおおいました。欲を言えば、主人公サリーの心情にもっと迫ってほしかったな~。精神が極限状態にある、というのがもっと伝われば、よりリアルになるんじゃないかと。何となく感情移入しきれぬまま終わってしまった感もあります。もちろん、私の個人的な感想なのですが。

 なお、ブルガーは実在の人物をモデルにしています。お年は90を超えるそうですが、ご健在とのこと。妻がアウシュヴィッツで死んだのは自分のせいだとの自責の念にかられ、過去の呪縛から立ち直るのに40年を要したとのこと。高齢ながら昨年来日を果たし、語り部としての責務を果たすべく、日本でも自らの経験を語ったそうです。この方については過去ログ → コチラを。
by Alichen6 | 2008-02-27 15:59 | ドイツ映画

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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