ステキな本をいただいてしまいました。ドイツ語翻訳者の森内薫さん、中野真紀さんの共訳で、ダライ・ラマの言葉や思想について分かりやすく書かれた本です。子供向けではありますが、大人が読んでも心にしみる本です。「心にしみる」という言葉が、私の感想としていちばんしっくりくる気がする…。前半はダライ・ラマの半生、ひととなり、そして彼の考え方について書かれています。後半は具体的な質問が投げかけられ、それに対するダライ・ラマの回答が書かれています。ダライ・ラマの言葉を通して様々なことが見えてきます…。
『ダライ・ラマ 子どもと語る』(春秋社)
クラウディア・リンケ著
森内 薫/中野真紀 訳
世界の情勢がきな臭くなってきている今日この頃。私は平和が当たり前の時代を生きてきたので、こういう状況を意識するのは大人になって初めてかも。冷戦時代も危ない時期はたくさんあったと思います。だけどその時は子供だったので、まだ実感がわきませんでした。まさにこの状況下でダライ・ラマの本を読むと、心にしみるのです…。世界の指導者がみんな、ダライ・ラマの言葉に真剣に耳を傾けてくれればいいのに…。
宗教家の言葉としては一見、逆説的に見えてしまうのですが、よ~く考えてみると、これこそ普遍的な宗教なのだと思えてくる一節。本書から引用させていただきますね。
「だいじなの宗教ではない
何らかの宗教に属しているか、あるいは無宗教かは重要ではありません。現在の世界では、人間が全体として倫理基準にしたがって行動することがだいじなのです。(中略)宗教的価値観はその宗教の信者のみにかかわるのに対し、普遍的な非宗教的倫理は人類全体に当てはまり、誰ひとりとして除外されません。ほぼすべての人がこの価値観を受け入れることができます。
結局のところ、大きな宗教には似たような基本的な価値観があります。思いやりと寛容というメッセージは、あらゆる宗教でみられます。キリスト教徒であろうとイスラム教徒であろうとユダヤ教徒であろうと仏教徒であろうと無宗教であろうと関係ありません。」(以上、引用終わりです)
本来、宗教は人々が平和に暮らせるよう、心が満たされた状態で生きていけるよう、大昔からの人間の知恵がぎゅっと詰まったものであるはずですよね。いつの間にか人はその宗教以外の価値観を認めず、排他的になり、時に攻撃的にすらなってしまう。本末転倒ですよね…。また、他者への思いやりを忘れてしまい、自分の国だけよければいい、自分の国ファーストとなっている今の傾向。これもまた、何とかならんものなのか… どうしたら「優しい心」を育めるのか…。そんなことを改めて考えさせてくれる本でした。
そして翻訳がとても読みやすかった…!「優しい日本語」(「易しい」ではなく「優しい」日本語なのです)で書かれていて、それも心にしみた理由の1つかも。お二人が心を込めて向き合われたのが伝わってきました。表紙や挿絵も◎ とっても温かみのある絵です。もっと早く読めばよかった!と心から思いました♡
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