本のおすすめ その2「この人、カフカ?」

 またまたとっても素敵な本をいただきました♡ カフカが遺したメモ書きや手紙といった文章を数々のエピソードとともに紹介した作品です。99の章立てになっていて、1つ1つからカフカのお茶目な人間像が浮かび上がってきます。お恥ずかしい話ですが、カフカは「変身」くらいしか読んだことがないのです。あと、仕事でカフカが原作の作品を訳すことになったので、慌ててそれを読んだのみ。そんな私が読んでいいのか?ブタに真珠では?とも思ったのですが、著名な編集者・書評家も「本書はいわば『初心者のためのカフカ』、より広く、より深く読んでいくための手引きである」と書いているんだそうです(あとがきより)。おお!まさに私にうってつけ! カフカと聞くと、私はどうしても「難解」「変身…もとい、変人」「ほにゃく犬にはとても理解できない」というイメージで敬遠してしまいがち。しかーし。この本を読んでカフカのイメージが変わりました。

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『この人、カフカ? ひとりの作家の99の素顔』(白水社)
 ライナー・シュタッハ著
 本田雅也 訳


 …イメージがどう変わったかといいますとね。カフカって「愛すべき変人」なのではないかと。(変人というイメージ自体は変わることなく、むしろ確信に変わりましたが・笑) とにかくお茶目なんです。もっとも、本人の目の色については諸説あるそうで、「黒」と形容されていたり「灰色」だったり「青」だったり「茶色」だったり(第13章より)。ネタバレするといけないので詳しくは書けないのですが、章のタイトルをご紹介するだけで、とにかく雰囲気は伝わると思います。

2 カフカ、高校卒業試験でカンニングする
6 カフカ、システムに則り体操する
11 カフカ、バルコニーから痰を吐く
19 カフカはお上品でない
33 カフカは詩を一編書き、自分でも気に入っていた
37 カフカ、書き間違える
56 カフカ、ネズミを怖がる
57 人間と豚
61 カフカ、オリンピックでの勝利を夢見る
63 カフカが文学賞をほぼ受けたときのこと
67、68 カフカ、サインを偽造する
70 カフカ、ゴーストライターになる
73 カフカはアメリカに詳しくない
84 カフカ、人生相談にのる

などなど…

ね、興味をそそるタイトルですよね。個人的には「システムに則り体操する」「人間と豚」「カフカ、オリンピックでの~」のエピソードがツボでした。カフカったら長年にわたって「ミュラる」ことを続けていたんですね(謎)。そのシーンを想像すると笑っちゃう。

ところでドイツ語では、よく「Schwein!」と言って相手をけなすことがあります。直訳すると「ブタ野郎」。この罵り言葉が現代の映画にもやたら出てくる。「ゲス」とか「ゲス野郎」とかってバリエーションをつけることもあるけれど、イマイチなんですよね。翻訳者泣かせの言葉です。本書の翻訳をされた本田さんは、おそらく「Schwein」という言葉が使われているであろう箇所を「お下劣」とし、さらに「ブタヤロウ」とルビを振っておられました。思わずそこでぷぷっと噴いちゃいました。

 カフカが遺した文章の独特の味わい、それを集めて面白いエピソードとともにユーモアたっぷりに紹介した原作者の言葉、そしてそれをさらに絶妙な日本語に置き換えた翻訳者さんのセンス。この3つが溶け合って一つの世界 - カフカワールド - を作っている、そんな印象を受ける本でした。難解だと決めつけないで、読んでみようかなぁと思わせてくれる本です。

追記:紙の材質と色、フォント、そしてレイアウトも素敵です♪






Commented by falan at 2017-04-25 19:45 x
カフカと聞くと、はにかんだような微笑みを思い浮かべてしまいます。「この世に救いはあるのでしょうか」とたずねられたとき「あります。あります。おおありです。…でも私たちのためにではないのです」と答えた時も、ひそかにくくッと笑っていたような気がします。

この本を読めばカフカのあらたな面に出会えそうな本ですね。読んでみます。ご紹介くださってありがとうございます。
Commented by hondayonda at 2017-04-25 22:23 x
お読みくださっただけでなく、すてきな感想を書いていただいてうれしいです。目の付け所が、やっぱりほにゃくのひとならではですね…。
「救いがたくもお下劣(ルビ:ブタヤロウ)なのです」と訳したところは、"unrettbar schweinisch" で、おっしゃるとおり「ゼツボウテキにブタっぽいんだよね〜」です…。
カフカ、ヘンなひとですよね。
Commented by Alichen6 at 2017-04-26 08:33
★ふぁらんさん おはようございます~ コメントありがとうございます。ふぁらんさんのことですから、きっとカフカにもお詳しいですね。たくさん読んでおられるのではないでしょうか。この本は、「初心者のためのカフカ」であると同時に「より深くカフカを知る本」でもあると感じました。お詳しい方がお読みになれば、さらに深まるのではないかと…(#^^#) ホントに「愛すべき変人」だと思いました。ぷぷっと笑ってしまったり、「へ?」と理解不能な行動だったりと、知的に楽しい本でした。おすすめです~。
Commented by Alichen6 at 2017-04-26 08:36
★hondayondaさん おはようございます~ ステキな本の翻訳、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。ほかの方々の書評をネットで読んだのですが、皆さん一葉に「翻訳がすばらしい」と書いておられましたね。カフカの本も、本田さんに訳していただきたい、という感想も。カフカが難解に思えるのは、一つに翻訳が難解だからという面もあるのかもしれません。ドイツの本って、昔は「大先生」がやたら小難しく訳していましたよね。それでみんな「む、む、難しい…」と敬遠してしまう。本田さんが新訳を出してくださるといいなぁなんて思ってしまいました。
by Alichen6 | 2017-04-25 10:04 | ドイツのこと | Comments(4)

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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