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【自分用のメモ】 ドイツ映画 『Die freudlose Gasse』(喜びなき街)

 前から見たいと思っていた映画があります。G.W.パープスト監督の出世作「喜びなき街」(1925)。サイレント映画です。まだまだ無名に近かったグレタ・ガルボが主演の1人を演じ、これで一気にブレイクしたんだそうです。残念ながら日本語字幕入りは廃盤なのか、手に入らないみたい。YouTube ではフランス語字幕入りが全編見られますが、画質が悪いので分かりづらいかも。私はオーストリア版のDVDを貸していただき、鑑賞しました。日本ではなかなか見られない作品をご紹介するのは申し訳ない気がします。以下、自分用のメモみたいなものです…。すみません。もしご興味がありましたら、チラ見ならぬチラ読みしてみてくださいませ。

【自分用のメモ】 ドイツ映画 『Die freudlose Gasse』(喜びなき街)_e0141754_15323268.jpg


『喜びなき街』 (原題:Die freudlose Gasse )
監督:G.W.Pabst (G.W.パープスト)
撮影:Guido Seeber (グイド・ゼーバー)
原作:Hugo Bettauer (フーゴ・ベッタウアー)
出演:Greta Galbo(グレタ・ガルボ)、Asta Nielsen(アスタ・ニールセン)、Werner Krauß (ヴェルナー・クラウス)

<簡単なあらすじ>
 1921年ウィーン。かつての華やかな繁栄は過ぎ去り、庶民は第一次大戦後の混乱とインフレ、貧困にあえいでいます。メルヒオール横丁の住民も例外ではありませんでした。肉を手に入れるのは至難の業。翌日に肉が売り出されるとの知らせを聞き、人々は前の晩から精肉店の前で行列を作るのでした。しかし精肉店の強欲店主ガイリンガーは、富裕層に高く売りつけるために庶民には肉を売りません。何時間も並んだ末、肉を買えずに庶民はトボトボと家に帰って行くのでした。

 近所にはグライファー夫人が経営する洋品店がありました。やり手のグライファー夫人は、洋品店のほかにナイトクラブやホテルも経営し、借金のカタに若い娘を自分のクラブで働かせ、売春のあっせんをしていました。そして上前をハネるという典型的なやり口。言葉は悪いけれど、いわゆる「遣り手ババア」ですね。そのナイトクラブでは、経済の混乱に乗じて財産を築き上げた成金たちが夜な夜なパーティを開いておりました。彼らが考えるのは金と女のことばかり。また、そこに出入りする有閑マダム(死語?)はひとときの情事にふけるのでした。

 メルヒオール横丁に住む貧しい家庭の娘、マリア(アスタ・ニールセン)はフィアンセに貢ぐため、娼婦へと転落します。このフィアンセは、マリアと結婚の約束をしておきながら、金目当てで成金の娘と結婚しようとナンパに余念がありません。マリアの家のすぐ上に住むグレーテ(グレタ・ガルボ)は役人の父・幼い妹との3人暮らし。しかし父は退職金を株の投資につぎ込み、株の暴落で一文無しとなってしまいます。父の借金を返すため、グレーテもグライファー夫人の店で働くことになります。しかし、いかがわしいショーに出演する寸前、裕福なアメリカ人に救われます。

 すさまじい貧困の中、庶民の怒りは頂点に達します。彼らが向かった先は…

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 第一次大戦後の混乱とインフレにあえぐ没落した庶民。その日食べるものにも困り、寒風吹きすさぶ冬の夜、精肉店で夜通し行列を作る。一方でグライファー夫人が経営するナイトクラブでは、成金たちが、夜な夜なパーティを開いている。彼らが考えることは金儲けと色事。非常に退廃的です。心は清いのに貧困ゆえに身を持ち崩す女性2人も明暗が分かれます。片や、本当に転落してしまうマリアと、最後の最後に「王子様」に助けてもらうというハリウッド的結末に救われるグレーテ。ウィーンの「明」と「暗」が様々な形で交互に描かれ、これでもか、これでもかと当時の社会の不条理や矛盾を見せつけられる気がしました。

 私の知識不足で、本からの受け売りなのですが(恥)、パプスト監督はドイツ映画界で「Neue Sachlichkeit (新即物主義)」という新ジャンルを取り入れた監督なのだそうです。1920年代前半は、「カリガリ博士」に代表される表現主義の映画が大流行。人間の内面のドロドロや狂気、不安などを光と影を駆使して描くスタイル。しかし表現主義の映画は次第に飽きられます。そんな中、様々なジャンルの映画が作られるようになりますが、パープストは現実をリアリスティックに描く監督だったのだそうです(ああ、こういう時に私の知識の浅さが出るんですね…。監督の名前はもちろん知っていたけれど、これまであまり関心もなく、調べることもありませんでした…間違ったことを書いておりましたら、ご指摘ください)。

 ところでこの作品の原作は、ユダヤ系のジャーナリスト&作家フーゴ・ベッタウアーという人です。前に一度だけ、このブログでご紹介したことがありました → コチラ。1925年3月に暴漢に襲われたのが元で亡くなったとのこと。「喜びなき街」の初公開が同年5月ですから、公開を待たずして亡くなったんですね。また、この過去ログに載せた雑誌の表紙は、この映画のワンシーンです。

【自分用のメモ】 ドイツ映画 『Die freudlose Gasse』(喜びなき街)_e0141754_21133251.jpg 当時20歳だったグレタ・ガルボがめちゃくちゃキレイ…!ハタチとは思えない大人びた表情を見せています。目深にかぶった帽子も素敵だし、オフィスでタイプを打つ姿も美しい…。とってもスレンダーだったんですね。この映画、サイレント映画ゆえに分かりづらい箇所もありますが、明と暗を対比しながら巧みにエピソードを織り交ぜていく作りに引き込まれました。私ったら二回も見ちゃいましたぜ。ハリウッド映画のようなテンポのよさはないので退屈に感じられる箇所も確かにあるけれど、当時の世相を鋭い視線で描き出す演出は圧巻。私は個人的に「見てよかった!」と思ったのですが、一般的にはどうなのかしら。傑作と呼ばれているので、きっと同じ意見の人が多いんだろうなぁ。

 しか~し。廃盤になっているのがモッタイナイ。ご縁があるといいなぁ…(本音)
by Alichen6 | 2014-09-14 14:45 | ドイツ映画

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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