キネマ旬報 1921年11月21日号のコラム (3年前のブログ記事より)

 皆様、桜の季節となりましたね。いかがお過ごしでしょうか。またまた更新が滞ってしまいました。なんだかもう、連日バタバタしちゃって…。調べ物で検索をしておりましたら、自分の記事がヒットしました。検索で自分のブログに行きあたると、非常に恥ずかしい気持ちになります。。何でしょね、これって。既に読んでくださっている方には申し訳ないのですが、最近のドイツ映画の傾向をまとめる機会がありまして、まさにタイムリーだったので再掲させてください。旅行記ばかりUPしていて、「日本で公開されたドイツ映画」も中断したままでしたので、その続きも後日改めて…


*********(2014年6月の日記より)************


 先日、調べものがあって久しぶりにフィルムセンターの図書室へ行ってまいりました(フィルムセンター図書室についてはコチラを)。あそこにはキネマ旬報が創刊号からずっと置いてあるのです。その他の雑誌はすべて閉架なのですが、キネマ旬報だけは開架。とりあえず、ドイツ映画に関する記事を眺めていたのですが、面白いコラムがありました。現代に通じるところがあるのです。以下、1921年11月21日号のコラム「マリア・マグダレナを見る記」から冒頭部分を引用いたしますね。

『獨逸の映畫だといふと一も二もなく高級文藝映畫といふ銘を打つ。天下の有象無象がそれ行けと其の封切館に殺到する――まア夫れ程でないまでも獨逸の映畫は深刻だよ位の批評を與へることには大抵のフアンが一致してゐるらしい。で獨逸の文藝映畫は近代的の苦悩を著しくゑぐり出してみせてゐる點で米國ものとは趣を異にしてゐる。獨逸の映畫の方がゑぐり方が深い、のみならず切實な人生に觸れてゐる。つらい苦の世界をそのまゝスクリーン上に再現する。映畫藝術の最も得意とすべき寫實的壇場に於てその驥足を十分伸べているのが獨逸の近代文藝映畫である。最もこれは最近ポツポツ封切された若しくはされるべき獨逸の映畫に就て特にアテはまるやうにデツチあげた概論にすぎない、獨逸だつて映畫はやつぱり商賣である。だからいづれも様の御意に召すやうにいろいろな映畫がある。凸坊新畫帖式の線畫フィルムもある。センセーショナルな猛獸映畫がある。ロココ式のオペラ趣味を映畫化したものがある。千態萬状といふかね。しかしまア我々が獨逸映畫から期待し得る興味は近代的苦悩の深刻な描破といふことになりはしまいか。人によつて賢しで、獨逸映畫は獨逸映畫、亜米利加映畫は亜米利加映畫、仏蘭西映畫は仏蘭西映畫と各々その分を守らせる方がいゝ。てんでんに持味といつたやうなものがあるんだから。』

 旧字体が結構あって打つのがタイヘンでした^^; ちょっと長くなっちゃうけれど、今の仮名遣いに直したものを下に載せちゃいますね。

『ドイツの映画だというと一も二もなく高級文芸映画という銘を打つ。天下の有象無象がそれ行けとその封切館に殺到する――まあそれほどでないまでも、ドイツの映画は深刻だよくらいの批評を与えることには大抵のファンが一致しているらしい。でドイツの文芸映画は近代的の苦悩を著しくえぐり出してみせている点で米国ものとは趣を異にしている。ドイツの映画のほうがえぐり方が深い、のみならず切実な人生に触れている。つらい苦の世界をそのままスクリーン上に再現する。映画芸術の最も得意とすべき写実的壇場においてその驥足(きそく)を十分伸べているのがドイツの近代文芸映画である。もっともこれは最近ポツポツ封切りされた、もしくはされるべきドイツの映画について特に当てはまるようにでっちあげた概論にすぎない、ドイツだって映画はやっぱり商売である。だからいずれも様の御意に召すようにいろいろな映画がある。凸坊新画帳式の線画フィルムもある。センセーショナルな猛獣映画がある。ロココ式のオペラ趣味を映画化したものがある。千態萬状というかね。しかしまあ、我々がドイツ映画から期待しうる興味は近代的苦悩の深刻な描破ということになりはしまいか。人は道によって賢しで、ドイツ映画はドイツ映画、アメリカ映画はアメリカ映画、フランス映画はフランス映画とおのおのその分を守らせる方がいい。てんでんに持ち味といったようなものがあるんだから。』

 ね、面白いでしょ?(…と押しつけがましくてスミマセン) ドイツ映画は深刻だ、高級文芸映画だ、とみんな思っているけれど、それは一部の作品だけを見て、さもそれがドイツ映画だと結論づけようとしているだけだ、映画はビジネスなのだからドイツにも様々な映画があるんだ。猛獣映画(←見てみたい)や、凸坊新画帳(←大昔、「でこぼうしんがちょう」というタイトルの和製アニメがあったんだそうです。スゲー)式のアニメだってある。ただし、我々はやっぱりドイツ映画にはシリアスな作品を期待してしまう。どの国でもそれぞれ持ち味があるのだから、それぞれの得意分野を鑑賞するのがいい」ってことなんでしょうね。うーん、今にも通じる内容だー!

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我が家のアイドル系、くららで~す❤ (小首をかしげております)



Commented by eastwind-335 at 2017-03-31 06:34
私は日本でドイツ映画を見られる機会があるだけでも感謝なのですが、一方で、旅行中にドイツの街中の映画のポスターを見ていると、これ、面白そうなんだけどなー、でも日本の配給会社が思い「ドイツ映画」とは違うんでしょうね、と思うものと出会います。ただ、それが「ドイツ映画」なのか「ドイツで上映されている他国の映画」なのかまではわからず、ではあるのですけれど。
私たちの外国観は、現地で生活体験を持たなければ、「メディアを通して形成されたイメージ」になってしまいます。BSのドキュメンタリーもドイツ物がもう少し「これまで作り上げてきたイメージ」に新たなイメージを付け加えることができるような内容が取り上げられるといいのに・・と思うこの頃です。

個人的には、日本は最近「翻訳文化」が落ちてきていて、世界的にヒットしたファンタジーの翻訳ばかりが本屋のティーンエイジャー向け棚に並んでいるのが気になっています。そんななかで、岩波が21世紀版の「少年少女文庫」を目指すかな?というスタンスの児童書の出版を始めているのはうれしいです。
Commented by Alichen6 at 2017-03-31 22:06
★東風さん!! こんばんは~ コメントをいつもありがとうございます❤ そうですよね、「これ、日本で公開すればいいのに…」と思うことがよくあります。でも、「ドイツ映画らしい映画」じゃないと、なかなか配給はされませんよね。「ドイツ映画らしい映画」というのは、ナチ映画か冷戦ものというのが多い・・・。同じように、私たちが他の外国に対して描いているイメージというのも、かなり偏っているんだろうなぁと思います。翻訳本のほうは気にしたことがなかったのですが、そっかー、そうなんですね。うちの子供が小さかったころ、私の世代が当たり前のように読んだ本(「小公女」とか「長靴下のピッピ」とか「シートン動物記」とか…)がまったく読まれていないことに驚いた記憶があります。翻訳本とは違いますが、伝記物が減った気がします。。。伝記ってすっごく好きだったのですが、今は流行らないのかなー (話が思いっきりそれてしまいましたが…)
Commented by eastwind-335 at 2017-04-01 07:04
私は時折に国立・私立の小学校がある路線を利用することがありますが、車内で読書にいそしむ生徒たちも、それが伝記であることはまれです。一方で、昨秋、お受験塾近くのコーヒーショップでは、お母さんが幼稚園児らしき子供に「頭が良い子を育てる偉人伝」みたいな背表紙の本を音読させていました(笑)。背表紙に驚き!伝記が遠いところにあるなあーと思いました。
職場の若い人に「小公女セーラって、むかしアニメで見ましたけど、原作があるんですか?」と言われ、愕然とした思い出があります。まあ、私も若い人が読む人気小説まで手が回りません。幸いにもすぐに「ドラマ化」されるので出版情報とテレビ欄のドラマのあらすじから「だいたい、こんな本」と想像する、そんな毎日です。
Commented by Alichen6 at 2017-04-02 10:58
★東風さん おはようございますー。あ、もう11時だから「おはようございます」はおかしいですね^^; 久しぶりに晴れて気持ちがいいですよね。外は桜(と花粉)で盛り上がっているだろうなぁ。通学途中に社内で絵本や本を読む子供ってよく見かけますよね。伝記って読まれなくなったなぁと私も思います。昔は「ワシントン」「エジソン」「キュリー夫人」あたりは定番でしたよね。あの類って、「すごい人ってすごい人生を送っているんだなー」というソボクな驚きと同時に、時代背景(戦争で苦労するというパターンが多いですよね)にいろいろな思いを抱いたものでした。。。両方が学べる気がするのですが、今の子たち(うちの子供もそうでした)には響かないのかなぁ。昔の文学がいい!とは言わないけれど、時代を越えて愛されてきた本って、やっぱりよいものだと思うのですが。。。。
by Alichen6 | 2017-03-30 10:45 | ドイツ映画 | Comments(4)

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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