スペインのアニメ『しわ』
2013年 05月 17日
『しわ』 公式サイトは → コチラ
あらすじ(公式サイトより引用いたします):
『かつて銀行に勤めていたエミリオは、認知症の症状が見られるようになり、養護老人施設へと預けられる。同室のミゲルは、お金にうるさく抜け目がない。食事の時のテーブルには、面会に来る孫のためにバターや紅茶を貯めている女性アントニアや、アルツハイマーの夫モデストの世話を焼く妻ドローレスらがいる。
施設には様々な行動をとり、様々な思い出を持つ老人達が、日々の暮らしを送っている。そして重症の老人は2階の部屋へと入れられることがわかる。
エミリオはある日、モデストと薬を間違えられたことで、自分もアルツハイマーであることに気づいてしまう。ショックで症状が進行したエミリオは2階へ送られる日も遠くない。そんなエミリオのことを思い、ついにミゲルはある行動に出るのだった…』
私事で恐縮ですが、私の母が認知症を患っておりまして、もう寝たきり。自宅で父が介護をしております。それだけに、認知症というテーマは私にとっては非常にタイムリー。たまに父の手伝いをする程度なので、あまりエラそうなことは言えないのですが、認知症を発症してから寝たきりになるまでの経過をすべて見てきました。年末に2か月ほど入院し、その後1か月間は介護施設にも入っておりました。それだけに試写会場でぐっときてしまい、鼻がジュルジュル…。見苦しい姿をお見せしちゃってずびばぜんっ そして私につられてジュルジュルになってしまった方、ずびばぜんっ
ネタバレになるといけないので詳しくは書けないのですが、心から感じたのは「(介護施設に)入居しているお年寄りの数だけ人生がある」ということ。若いころは恋愛もしたし、幸せな時代もあれば苦労もしている。とにかくみんな一生懸命生きてきたし、認知症を発症した今も真剣に生きているのです。物語の舞台は、きれいな、そして高級そうな介護施設。介護スタッフもみんな親切で、隅々まで清潔。病気への対応もバッチリ。だけどなぜか無機的なのです。快適な環境なのに、なぜか見ていて切なくなる…。この雰囲気、非常によく分かります。
一方で、介護する家族の苦しみも垣間見ているので分かっているつもり。決して「姥捨て山に捨てる」なんて気持ちではなく、苦渋の選択なのですよね。息子や娘にも生活があるし、仕事もある。認知症患者の介護というのはホントに「壮絶」。それ以外の言葉は思いつきません。悩みに悩んだ末に施設へお願いする人が多いのだと思います。誰がその決断を責められるでしょう。本編中、何度か「ここ(施設)は、きれい事じゃない」といったセリフが出てきます。その意味が分かるだけに、ずしっときました。
あらすじにもあるように、本作では主人公のエミリオと同室のミゲル、そしてアントニアやドローレスらの会話や行動をとおして、認知症患者の苦悩や介護の現実といった問題が語られています。深刻なテーマではあるけれど、一貫して「温かなまなざし」で描かれており、見ていて心もほんわかと温かくなってきます。ぷぷっと笑っちゃう場面もありました。「老い」とは誰もが直面する問題。最初は親、そして次に自分。やはり人間は独りでは生きていけないんだな、ということも感じました。人は他人から思いやりをもらって癒やされ、他人を思いやることで自らも癒やされる…。
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字幕翻訳はお友達の金関いなさん。とっても自然で、すっと物語に入り込めるステキな字幕でした。何よりも、心を込めて1枚1枚作ったことが伝わってくるのです…(なんて私ごときが生意気なことを書いてしまってスミマセンっ)。配給は、あのトトロなジブリ。6月22日から公開だそうです。詳しくは公式サイトをご覧になってくださいね。オススメの作品です!