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『日本で見られるオススメドイツ映画』 その2

[2017年6月7日更新]

「日本で見られるオススメドイツ映画 その2」は戦後~現代のドイツです。このリストに入っていない作品で「これは外せんだろ~」というのがありましたら、教えてくださいね。更新した作品は赤く色付けしております。  なんとなーく手前ミソで申し訳ない気も… すんませんっ=3=3=3

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●戦後のドイツ~東西問題~東西ドイツ統一

「トンネル」(Der Tunnel) 2001年
Roland Suso Richter(ローラント・ズゾ・リヒター)監督
愛する人たちを東ベルリンから西ベルリンへ逃亡させるため、秘密裏に145メートルのトンネルを掘った男性の実話をもとにしたドラマ。Zweiteilerと呼ばれる2話完結ドラマを劇場用に編集したもの。ベルリンの壁が作られたころの東西ドイツの状況がよく分かる。

「グッバイ、レーニン!」(Good Bye Lenin!) 2003年
ヴォルフガング・ベッカー(Wolfgang Becker)監督
東西ドイツ統一の混乱ぶりをユーモアたっぷりに描いた作品。主役のダニエル・ブリュールは、この作品で一気に国際的なスターとなった。一見、東ドイツを揶揄しているようであるが、実は「オスタルギー(OstとNostalgieの造語)」も根底にある(ように私は思いました)。そして母を思うひたむきな主人公アレックスの奮闘ぶりに、東西とは無関係の大事なものが見えてくる。東ドイツの国産ブランドの消滅や西ドイツマルクの導入による通貨統合など、東西統一がいかに混乱を巻き起こすものであったのか、市民レベルで追体験できる。

「ベルリン・クラッシュ」(Crazy Race 2 - Warum die Mauer wirklich fiel)2004年
クリストフ・シュレーヴェ(Christopf Schrewe)監督
 時は1989年、ベルリンの壁崩壊の直前。西ドイツに住むジェニーは、東側に住むボーイフレンドのもとへ車で出かける。娘の東行きを恐れた父親が必死で追跡するが、ジェニーは振り切り、彼氏の元へ。そんな折、東ドイツ幹部の「ちょっとした行き違い」から国境が開かれ、多くの東ドイツ人が西ドイツへとなだれ込む。そしてベルリンの壁が崩れた…。
 なんともバカバカしいストーリーだが、東ドイツの大衆車トラバント(愛称トラビ)のカーチェースやらクラッシュシーンやらが盛りだくさんで、見方によっては“圧巻”。。東西の言葉の差から生じる勘違いなども描かれており、東西ドイツに興味がある人なら楽しく見られる作品。

「善き人のためのソナタ」(Das Leben der Anderen) 2006年
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(Florian Henckel von Donnersmarck)監督
東ドイツの秘密警察「シュタージ(国家保安省)」の諜報部員と、行動を監視される劇作家ドライマン、そしてその愛人クリスタとの関係を描いたアカデミー外国語映画賞受賞作。綿密な調査のもとに再現された監視・盗聴の手口は見ていると背筋が寒くなる。主役ヴィースラー大尉を熱演した名優ウルリッヒ・ミューエはその後、ガンで亡くなった。劇作家役のセバスチャン・コッホ、愛人で女優のクリスタを演じたマルティナ・ゲデックらの演技も光っている。

「バーダー・マインホフ 理想の果てに」(Der Baader Meinhof Komplex) 2008年
ウリ・エーデル(Uli Edel)監督
RAF(ドイツ赤軍派)の中心的メンバー、アンドレアス・バーダーとウルリーケ・マインホフ、そしてその仲間たちの活動を描いた問題作。戦後ドイツに大きな影響を与えた68年運動(68er-Bewegung)やRAFのテロ活動(「ドイツの秋、deutscher Herbst」と呼ばれる1977年の事件が有名。経済界の重鎮マルティン・シュライヤー誘拐殺害事件、ルフトハンザハイジャック事件など)、そしてそれらの結末が描かれている。モーリッツ・ブライプトロイやマルティナ・ゲデック、ブルーノ・ガンツなど、豪華なキャストも見もの。監督によると、当時の事件で発砲された弾の数まで数え、本作で忠実に再現したという。

「ハイジャック181」(Mogadischu) 2008年
Roland Suso Richter(ローラント・ズゾ・リヒター)監督
テロリストにハイジャックされた飛行機の乗客を、特殊部隊GSG9が突入して救出するまでを描いたドラマ。1977年に実際に起きた事件を元にしている。テロリストたちは刑務所にいるRAFのメンバーの釈放を求めていたが、シュミット首相は彼らとの交渉を拒否し、特殊部隊に突入の指令を出す。GSG9は、ミュンヘンオリンピックで起きたテロ事件の苦い経験を教訓に結成された特殊部隊。上記の「バーダー・マインホフ 理想の果てに」と同様、ドイツ国民を震撼させたテロリストたちの活動、そして彼らの脅しに屈することなく毅然と立ち向かった政府の対応を描いている。(日本のDVDはパニック物の扱いですが、過去の事件を忠実に再現したということで、ドキュメを見ているような感じです。)

「東ベルリンから来た女」 (Barbara)2012年
クリスティアン・ペッツォルト (Christian Betzold)監督
 時は1980年、ベルリンの壁崩壊の9年前。優秀な医師バルバラは、西ドイツに住む恋人のところへ行くために移住申請を出す。ところがそのために当局からにらまれ、首都の大病院から地方の小さな病院に左遷されてしまう。頑なになり、周囲に溶け込もうとしないバルバラ。新しい勤務先で上司となったアンドレは誠実な医師だった。彼もまた、医療ミスの責任を問われて左遷された身だった。当局の監視の目を盗み、西の恋人と東で密会を重ねるバルバラだったが、次第にアンドレに惹かれていく。恋人の手引きで西へ亡命する日が刻々と近づく中、入院してきた少女にバルバラは心を動かされる…。
「ベルリン派」と呼ばれる新しい潮流をリードするペッツォルト監督の最新作。美しい自然を背景に、バルバラの心の動きが抑えめのセリフで静かに描かれる。

ハンナ・アーレント (Hannah Arendt) 2012年
マルガレーテ・フォン・トロッタ (Margarethe von Trotta)監督
ナチの迫害から逃れるためにアメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人思想家ハンナ・アーレント。ユダヤ人虐殺にかかわったナチのアドルフ・アイヒマンがイスラエルの諜報部モサドによって捕らえられ、エルサレムで裁判にかけられることになった。ハンナは傍聴を希望し、エルサレムへ向かう。しかしハンナが法廷で見たアイヒマンはモンスターでもなければ恐ろしい悪の権化でもなく、ただの凡庸な役人であった。「悪の凡庸さ」と思考停止が、あれだけの悲劇を招いたことを雑誌で発表したところ、大騒ぎとなる。同胞のユダヤ人を敵に回しただけでなく、ハンナが愛してやまない大切な友人も次々と失うことになった。それでも考えを曲げず、「悪」について考え続けるハンナの姿が描かれている。

さよなら、アドルフ (LORE) 2012年
ケート・ショートランド (Cate Shortland)監督
熱心なナチ信奉者の両親を持つローレは、戦争中も何不自由ない暮らしを送っていた。ところが敗戦となり、両親は連合国側から追われる身となる。幼い弟や妹とともにドイツ南部の山中に身を隠していたローレは、北部に住む祖母宅を目指してドイツを縦断する。道中、不思議なユダヤ人青年と知り合い、旅を共にすることになった。ナチの蛮行を知ったことで、それまで培ってきたローレの価値観が大きく揺らぐことになる。ナチを信じていた子供たちの「戦後」を描いた問題作。監督はオーストラリア人だが、出演者はすべてドイツ人。

「あの日のように抱きしめて」 (Phoenix) 2014年
クリスティアン・ペッツォルト(Christian Poetzeld)監督
ユダヤ人のネリーは強制収容所を生き延び、戦後の混乱期にベルリンへ戻ってきた。顔にひどい傷を負ったネリーは整形手術を受ける。最愛の夫ジョニーとようやく再会を果たしたものの、夫は変わり果てたネリーを見ても自分の妻だとは気がつかない。それどころか、ネリーを“死んだ”妻に仕立てて遺産を相続し、山分けする計画を持ちかけるのだった。夫を信じたいネリーは、その計画に乗る…。ペッツォルト監督が「東ベルリンから来た女」で主役を演じたニーナ・ホスおよびロナルト・ツェアフェルトと再びタッグを組んだ心理サスペンス。町だけでなく人の心も破壊しつくす戦争の虚しさが伝わってくる。また、セリフが抑えめであるだけに、2人の演技力が光る。

「顔のないヒトラーたち」(Im Labyrinth des Schweigens)2014年
ジュリオ・リッチャデッリ(Giulio Ricciarelli)監督
終戦から13年が経過した1958年。誰もが過去を忘れ、前を向いて進もうとしていた頃。駆け出しの検察官ヨハン・ラドマンは、1人の新聞記者を通してアウシュヴィッツ絶滅収容所の実態を知ることになる。その残忍さに衝撃を受け、世間がそのことを全く知らないことに驚愕する。そして周囲の反対を押し切り、戦争犯罪者を法廷で裁くべく、証言を集め始めた。しかし関係者の口は重く、証拠集めは難航した…。ドイツの「過去に向き合う姿勢」の原点ともなった、アウシュヴィッツ裁判。そこに至るまでの検察官たちの苦闘を描いた作品。

「アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男」(Der Staat gegen FritzBauer2015 NEU!

ラース・クラウメ(Lars Kraume)監督

第二次大戦後のドイツ。敗戦から10年以上が経過し、経済も復興しつつあった。ヘッセン州検事長のバウアーは、国外へ逃亡したユダヤ人大量虐殺の責任者アドルフ・アイヒマンを見つけ、ドイツの法廷で裁くために奔走する。彼の元に寄せられた情報を手掛かりに、モサドに働きかけるバウアー。しかし彼の前に大きく立ちはだかったのは、戦後も何食わぬ顔をして居座るナチの残党だった。当時の社会情勢を盛り込みつつ、サスペンスタッチで描いたドイツの戦後史。ドイツ人による戦後処理の前段階がよく分かる。


「ヒトラーの忘れもの」(Under sandet) 2015 NEU!

マルティン・サンフィリート(Martin Zandvilet)監督 デンマーク、ドイツ

終戦直後のデンマーク。かつてナチ・ドイツは連合軍の上陸を阻むため、西海岸沿いに地雷を200万個以上埋設していた。その地雷処理のため、デンマークは2000名ものドイツ人捕虜を投入する。その多くが少年兵であり、命を落としたり、手足を失ったりした者も少なくなかった。長い間伏せられてきた歴史の暗部を描き出した作品。


●現代のドイツ

「ベルリン・天使の詩」(Der Himmel über Berlin) 1987年
ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督
東西ドイツ統一前のベルリン。地上の人々を見守る天使ダミエルが、サーカスで空中ブランコに乗る女性マリオンに恋をしてしまう。しかし天使はひとたび人間に恋をすると、その命を失ってしまうのだった…。統一前のベルリンの映像が興味深い。名優ブルーノ・ガンツや、刑事コロンボで有名な故ピーター・フォークの演技も見もの。

「バグダッド・カフェ」(Out of Rosenheim) 1987年
パーシー・アドロン (Parcy Adlon)監督
アメリカの砂漠の真ん中にある寂れたモーテル「バグダッド・カフェ」。そこに南ドイツからの旅行者ジャスミンが現れる。常に不機嫌な女主人ブレンダはジャスミンに冷たく当たる。しかしふくよかなジャスミンの不思議な魅力に、ブレンダの頑なな心も少しずつ和らぎ、次第に心を開くようになる。いつしかジャスミンはバグダッド・カフェの人々に愛されるようになっていく…。1987年に製作され、日本では1989年に公開され、切ない響きの音楽とともに大ヒット。ミニシアター・ブームを作った作品の1つと言われている。荒涼とした砂漠、容赦なく照り付ける太陽と青空。殺伐とした雰囲気のカフェが、ジャスミンの登場によって少しずつ潤っていく様子が印象的。


「ビヨンド・サイレンス」 (Jenseits der Stille) 1996年
カロリーネ・リンク(Calorine Link)監督
聴覚障害者の夫婦と、それを支える少女の物語。少女は困難を乗り越えながら大人になっていく。美しい景色と、少女が奏でるクラリネットの音色が印象的な作品。カロリーネ・リンク監督の細やかな演出が心を打つ。同監督の「点子ちゃんとアントン」もオススメ。

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」 (Knockin' on Heaven's Door) 1997年
トーマス・ヤーン(Thomas Jahn)監督
余命わずかと宣告された男性2人のロードムービー。1人が「海を見たことがないと天国で物笑いの種となる」ともう1人に話したことから、2人は海を目指す。主役を演じたティル・シュヴァイガーの才能とセンスが感じられる作品。日本でもリメイクされた。書店で偶然ティル・シュヴァイガーを見かけたタクシー運転手トーマス・ヤーンが、それまで温めていた原案を初対面のシュヴァイガーに持ちかけたという。それが映画化につながった。この作品のあと、ティル・シュヴァイガーは俳優業だけでなく、監督業でも活躍するところとなる。

「ラン・ローラ・ラン」 (Lola rennt) 1998年
トム・ティクヴァ (Tom Tykwer)監督
将来を嘱望される若手監督の1人、トム・ティクヴァの出世作。赤い髪を振り乱して走る女性(フランカ・ポテンテ)と恋人(モーリッツ・ブライプトロイ)の演技が話題になった。ティクヴァ監督の「パフューム ある人殺しの物語」(原作:パトリック・ジュースキント)もオススメ。ただし、こちらは英語。

「MON-ZEN」 (Erleuchtung garantiert) 1999年
ドリス・デリエ(Doris Dörrie)監督
日本通デリエ監督による、日本が舞台の映画。禅にかぶれた中年ドイツ人兄弟による日本珍道中。監督は「漁師と妻」「HANAMI」など、日本を舞台にした映画を数多く撮っている。(残念ながら、後者2本は日本ではDVD化されていません。よくある“西洋人の目を通した日本の姿”を超えるものではなく、日本人からすると気恥ずかしいところもあります。しかし根底にあるのは普遍的なテーマであり、素直に感動できるように思います)

「アナトミー」 (Anatomie) 2000年
シュテファン・ルツォヴィツキー(Stefan Ruzowitzky)監督
パウラ・ヘニングはハイデルベルク大学の解剖学講座で学ぶ優秀な医学生。ある日、不思議な死体を解剖することになった。血液がゴムのように凝固しており、さらに足には「AAA」の文字が刻まれていたのだ。それが中世から続く秘密結社の頭文字であることに気づいたパウラは、その流れをくむ組織が大学内に存在することを突き止める。彼らの目的は、人間を生きたまま解剖し、最高の標本を作ることだった…。本作に続き、「アナトミー2」も制作されている。ルツォヴィツキー監督は2006年に「ヒトラーの贋札」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞。

「es」 (Das Experiment) 2001年
オリヴァー・ヒルシュビーゲル(Oliver Hirschbiegel)監督
アメリカのスタンフォード大学で実際に行われた実験を、場所をドイツに移して映画化したもの。被験者を看守役と囚人役に分け、ロールプレーイングさせる。そのうち双方とも役になりきってしまい、看守役はより残忍に、囚人役はより卑屈になり、人間性が崩壊していく。被験者たちは暴走し始め、想像を絶する結末を迎える…。モーリッツ・ブライプトロイの演技が鮮烈な印象を与えた。

「マーサの幸せレシピ」 (Bella Martha) 2001年
ザンドラ・ネッテルベック(Sandra Nettelbeck)監督
天才的センスを持つ一流シェフのマーサ。順風満帆に見えた人生だったが、姪を引き取ることで人生が一変する。姪や同僚との交流を通し、自分のレシピに欠けていたものを発見する…。ハリウッドでリメイクされたことでも知られる。ドイツを代表する女優の1人、マルティナ・ゲデックがこの作品で日本でも有名になった。

「飛ぶ教室」(Das fliegende Klassenzimmer)2003年
トミー・ヴィガント(Tomy Wigand)監督
ライプチヒにある聖トーマス校に転校してきたヨナタン。不安を抱えながら寄宿舎に入るヨナタンを、ベク先生は温かく迎えるのだった。ヨナタンは4人のルームメートともすぐに打ち解ける。偶然見つけた古い台本「飛ぶ教室」をクリスマスに上演しようと張り切る彼らに、ベク先生が待ったをかけた… ケストナー原作の心温まる作品。子供たちが生き生きと演じ、名優たちが脇を固めている。

「愛より強く」 (Gegen die Wand) 2004年
ファティ・アキン(Fatih Akın)監督
トルコ系ドイツ人ファティ・アキン監督の出世作。一貫してドイツにおける移民の姿を描いてきたアキン監督の名前を世界に知らしめることとなった。保守的な家族から離れるため、偽装結婚を持ちかけたトルコ系の少女が主人公。男は渋々了承するものの、やがて奔放な少女に強烈に惹かれていく。第54回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。アキン監督の作品を見ると、トルコ人を始め多くの移民が住む今のドイツがよく分かる。同監督の「太陽に恋して」「そして、私たちは愛に帰る」もオススメ)

ベルリン、僕らの革命 (Die fetten Jahre sind vorbei) 2004年
ハンス・ヴァインガルトナー(Hans Weingartner)監督
現代の社会に不満を抱き、金持ちの家に侵入しては家を荒す行為を繰り返すヤンとペーター。彼らは決まって、贅沢な暮らしに警鐘を鳴らすメッセージを残していき、自らを「エデュケーターズ」と呼んでいた。ある日、ヤンとペーター、そしてペーターの恋人であるユーレは一人の男性を誘拐する。しかしその男性は、よくいる堕落した金持ちではなく、かつて「68年運動」に燃えた左翼活動家だったことが判明する。そして4人で同じ時を過ごすうちに、人間関係が少しずつ変わっていく…。「グッバイ、レーニン」で一躍人気者となったダニエル・ブリュールのほか、「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」で有名なユリア・イェンチが出演。


「みえない雲」 (Die Wolke) 2006年
グレゴアー・シュニッツラー(Gregor Schnitzler)監督
青春を謳歌するヒロインが深刻な原発事故(Super-GAU)に遭い、母や弟を失う。自らも被曝の後遺症に苦しみつつ、恋人と励まし合いながら前を向いて生きて行こうとする。原発事故の恐ろしさを描き、ドイツの国内外で話題となった小説を映画化したもの。

「マルタの優しい刺繍」 (Die Herbstzeitlosen) 2006年
ベッティーナ・オーベルリ(Bettina Oberli)監督
長年連れ添った夫を亡くして塞ぎ込んでいたマルタが友達の慰めに奮起し、かつての夢だった手縫いのランジェリーショップを開く。ところが保守的なスイスの村は、ランジェリーショップに大反対。スイスらしい美しくのどかな風景の中で繰り広げられるプチ騒動。老いても前向きなマルタが素敵。スイス映画なのでスイスドイツ語。

「素粒子」 (Elementarteilchen) 2006年
オスカー・レーラー(Oskar Röhler)監督
ミシェル・ウエルベックのベストセラー小説を、オスカー・レーラー監督が映画化したもの。『現代社会の恐ろしいほどの愛の欠如と絶望感を、ユーモアと悲哀を交えて痛烈に描いた問題の恋愛劇(公式サイトより引用)』モーリッツ・ブライプトロイとマルティナ・ゲデックが共演している。

「厨房で逢いましょう」(EDEN) 2006年
ミヒャエル・ホーフマン(Michael Hofmann)監督
孤高の天才料理人グレゴアが作る料理はエロチック・キュイジーヌ(官能料理)と呼ばれている。彼の官能的な料理を食した者は、その魅力にとらわれてしまうという。そんなグレゴアが主婦エデンと知り合う。エデンも彼の料理に魅せられ、毎週厨房に通うようになる。料理には長けていても恋愛においては“おくて”のグレゴアは、密かにエデンに思いを寄せるのだった。しかし、それに気づいたエデンの夫が激しく嫉妬する… テーマが斬新。そしてエデンを演じる女性は、奔放な発言で世間を驚かせることで有名なタレント。彼女がおとなしい主婦を見事に演じている。美味しそうな料理も見どころの1つ。

「ウェイヴ」 (Die Welle) 2008年
デニス・ガンゼル(Dennis Gansel)監督
独裁とはどういうものかを体験させるため、高校の授業でロールプレーイングを実施した教師ベンガー。最初は乗り気ではなかった生徒も、共通のシンボルマークや白いシャツ、敬礼を取り入れるうちに異様な一体感に酔い、洗脳されていく。やがて後戻りができないほど生徒たちは暴走するのだった…。実話を元にしているだけに、生徒たちがマインドコントロールされていく過程は非常に不気味。

「ソウル・キッチン」(Soul Kitchen) 2009年
ファティ・アキン(Fatih Akın)監督
ハンブルクで大衆レストランを営むギリシャ系移民のジノス。彼の頭痛の種は、腰痛と仮出所中の兄イリアスだ。愛する恋人ナディーンとは遠距離恋愛中だが、どうも最近の彼女はよそよそしい。店の経営も苦しく、税金も滞納中。ところが変人の天才シェフを雇ったところ、店は大繁盛。そこへ、かつての同級生で不動産業を営むノイマンが近寄ってくる。彼はソウル・キッチンを乗っ取ろうと画策し、ギャンブル好きの兄イリアスに目をつけるのだった。はたして店の運命は…。一貫して移民問題を取り上げてきたファティ・アキン監督のコメディ。DJの経験もあるアキン監督らしく、音楽が軽快で楽しい。

「ミヒャエル」(Michael)2011年
マルクス・シュラインツァー(Markus Schleizer)監督
ミヒャエルは保険会社に勤めるエリートサラリーマン。仕事も順調、同僚との関係も良好だった。しかしそんな彼には秘密があった。一人住まいの自宅に少年を監禁し、ペドフィリア(小児性愛)的な欲望を満たしていたのだ…。近年問題になっている小児性愛と監禁事件をテーマにした問題作。シュライツァー監督はミヒャエル・ハネケ監督の下でキャスティング・ディレクターを務めた経験を持つ。残酷な状況が淡々と描かれており、観る者に不快感を抱かせる。しかし監禁事件が大きな社会問題となった今、この作品が持つ意味は大きい。

「犯罪 幸運」(Glück) 2013年 
ドリス・デリエ(Doris Dörrie)監督
戦争によって身内を殺され、祖国からドイツへ逃げてきたイリーナは売春で生計を立てている。そんなイリーナが犬と路上生活を続ける青年カッレと出会い、2人で同棲を始める。ところがある日、イリーナの得意客が心臓発作を起こして急死する。不法入国が当局にバレて祖国に強制送還されるのを恐れるイリーナ。カッレは彼女を守るため、必死の思いで遺体を隠す…。人気小説家フェルディナント・フォン・シーラッハの作品「犯罪」の中の1話をデリエ監督が映画化。現代のドイツが抱える問題もさりげなく描かれている。

「バチカンで逢いましょう」(Omamamia) 2012年
トミー・ヴィガント(Tomy Wigant)監督
主人公は、夫を亡くして失意のどん底にいるオマ(Oma=おばあちゃん)。経験なカトリック信者であるオマは施設に入ることを拒否し、カナダの自宅をこっそり出て法王のいるローマへ向かう。ローマには孫娘が暮らしているのだ。ところが老詐欺師ロレンツォと出会ってから、ハチャメチャな毎日が始まる…。
「バグダッド・カフェ」で一世を風靡したマリアンネ・ゼーゲブレヒトが久しぶりにスクリーンに戻ってきたことで話題になった作品。オマとジャンカルロ・ジャンニーニ演じる老詐欺師が繰り広げるドタバタが痛快で楽しく、またほのぼのとした雰囲気も味わえる。

「コーヒーをめぐる冒険」(Oh Boy) 2012年
ヤン・オーレ・ゲルスター(Jan-Ole Gerster)監督
親に内緒で大学を中退したニコは、まさに「自分探しの旅」の真っ最中。ガールフレンドとは別れ、飲酒運転で免許を取り上げられる。さらに無賃乗車で捕まりそうになり、父からは仕送りをストップされてしまう。元クラスメイトのユリカと再会したものの、過去のトラウマに苦しむ姿を目の当たりにする。そんなツイていない日の夜、ニコは不思議な老人と出会う。過去と現在が交差する不思議な町ベルリン。大都会で孤独に生きながら、人生の意味と真実を模索するニコ。数々の賞に輝いたヤン・オーレ・ゲルスターの初監督作品。

「陽だまりハウスでマラソンを」(Sein letztes Rennen) 2013年
キリアン・リートホーフ(KilianRiedhof)監督
パウル・アヴァホフは、かつてオリンピックのマラソンで金メダルに輝いた伝説のランナー。妻の病気をきっかけに、不本意ながらも夫婦で老人ホームに入居することになる。しかしホームの方針は、入居者に心安らかな"余生”を送らせること。歌を歌ったり工作をしたりといった毎日が耐えられなくなったパウルは、ベルリンマラソンを目指そうとする。そんな型破りなパウルに困惑する施設関係者や実の娘。そんな矢先、最大の理解者だった妻が急死してしまう。はたしてパウルはマラソンを完走できるのだろうか…? 喜劇俳優やテレビ司会者として有名なベテラン俳優ディーター・ハラーフォルデンの演技が光る、笑いあり涙ありの感動作。

「ぼくらの家路」(Jack) 2013年

エドヴァルト・ベルガー(Eward Berger)監督
10歳のジャックは、6歳の弟マヌエルとともに母親と3人で暮らしている。まだ遊び足りない若い母親は2人を家に残して遊び歩く。ところがある日、留守番をしていた時の事故がもとで、ジャックは施設に預けられてしまう。一時帰宅が許される夏休み、ジャックは家路を急ぐが、母の姿が消えていた。幼いマヌエルを連れ、母に会いたい一心でベルリンの町をさまようジャック。幼い少年が直面する、人間社会の過酷な現実。そして少年が下した決断とは…?

「ピエロがお前を嘲笑う」(Who am I - Kein System ist sicher) 2014年
バラン・ボー・オダー (Baran bo Odar) 監督
モテない・イケてない・ツイてないの三拍子、地味でダサい青年ベンヤミン。しかし彼はコンピューターの知識では、誰にも負けなかった。そんな彼が怪しい人物と出会ったことでハッキングに手を染めてしまう。誰にも顧みられることのなかったベンヤミンが、ネット内で一目置かれる存在となり、ハッキングに快感を覚えるようになる。ところが調子に乗っているうちに、大きな事件に巻き込まれてしまう…。アメリカでのリメイクが決まった話題作。最後の最後に大どんでん返しがある。

「君がくれたグッドライフ」(Hin und Weg)2014年
クリスティアン・チューベルト(Christian Zübert)監督
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されたハンネスは、妻や仲間を誘ってベルギーへ自転車旅行に出る。安楽死が合法化されているベルギーで最期を迎えようとしたのだ。旅の途中でそのことを知らされた仲間たちは動揺する。しかし次第に彼の選択を受け入れ、最期を見届けようとする。安楽死という難しい問題を正面から見据え、笑いも織り交ぜながらさわやかに描いた作品。

「帰ってきたヒトラー」(Erist wieder da)2015年
ダーヴィト・ヴネント(David Wnend)監督
自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが2014年に突然よみがえる。彼は物まね芸人だと思われ、テレビに出るはめに。ところが持ち前の演説能力で人々の心をつかみ、あっという間に人気者となる。撮影で全国行脚しながら、ヒトラーは人々の不満をうまくすくい取っていくのだった…。無名の舞台俳優オリヴァー・マスッチの名演技もあり、本国でもヒットを記録した。移民の流入と右傾化、そしてポピュリズムに傾いていく世界の状況を風刺した作品。

「生きうつしのプリマ」(Die abhandene Welt
マルガレーテ・フォン・トロッタ(Margarethe von Trotta)監督
死んだ妻によく似た女性をインターネットの記事で見つけた父。ニューヨークで活躍するオペラ歌手だった。真相を確かめるべく、ジャズシンガーの娘ゾフィはドイツからニューヨークへ飛ぶ。芸術家ゆえに気難しいその女性は、出生の秘密を抱えていた…。女優であり、歌手でもあるカーチャ・リーマンとバルバラ・スコヴァが見事な歌を聴かせる。映画「ハンナ・アーレント」のマルガレーテ・フォン・トロッタが、自らの体験に基づいて撮った作品。

『日本で見られるオススメドイツ映画』 その2_e0141754_08343325.jpg
ベルリン・シュテーグリッツにある古いスタジオ跡。壁にうっすら「FILM」という文字が見えます。




by Alichen6 | 2017-06-07 12:43 | ドイツ映画

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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