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by Alichen6
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『Maedchen in Uniform』 (制服の処女)


e0141754_21123528.jpg 『制服の処女』(1931) という、ヒジョ~に古い映画があります。タイトルだけ聞くとギョギョっとしますよね。レンタルビデオ屋さんで、カーテンに仕切られた奥のコーナーに置いているヤツじゃないかと。しかし違うのです。真面目な映画でございます。この作品を初めて見たのはかなり昔。その時は「ふーん」くらいにしか思わなかったのです。ところが先日の字幕翻訳セミナーでこの作品についてのお話を伺い、俄然興味がわいてきてしまいました。林文三郎さんとおっしゃる方が1930年代初頭、「嘆きの天使」とともにベルリンで字幕をつけたとのこと。当時もドイツ語から直接日本語訳をしていたんですね。ビックリです。(なぜ驚いたかといいますと、ドイツ映画界は当初から海外輸出を念頭に置き、必ず英語版を製作していたからです。当然、「制服の処女」も英語版から字幕がつけられたのだと思っていたものですから…)

 その字幕がどうしても見たくて、「古いVHSなら字幕も古いかも」と単純に考えたワタシは、ネットオークションでレンタル落ちの古いVHSを落札しちゃいました。ところが字幕は新しくつけられたものでして、ちょっぴりガックシいたしました。林文三郎さんのことは、また別の機会に調べたいと思います。

 その『制服の処女』の話に戻ります。なかなか興味深いので、ちょこっとご紹介させてください。

『Maedchen in Uniform』 (制服の処女) 1931年
監督:Leontine Sagan (レオンティーネ・サガン)
製作:Carl Froehlich (カール・フレーリッヒ)
Hertha Thiele(ヘルタ・ティーレ) マヌエラ役
Dorothea Wieck(ドロテア・ヴィーク) フォン・ベルンブルク先生役

<チョ~簡単なあらすじ>
 将校だった父を亡くした16歳のマヌエラは、厳しいしつけで有名な寄宿舎に送られます。パグ犬のような顔をした(失礼)院長は非常に厳格な人物で、プロイセンの伝統 - 規律と秩序を重んじ、質素で規則正しい生活を送ること - を守るべく生徒たちの行動に目を光らせておりました。マヌエラは友達には恵まれたものの、窮屈な寮生活にはなかなかなじめません。そんな息苦しい生活の中、若くて美しい教師フォン・ベルンブルク先生に生徒たちは憧れるのでした。もちろんマヌエラも先生に特別な感情を抱いておりました。
 年に1度の学芸会の日。アルコールの入ったパンチを口にしてしまったマヌエラは、酔った勢いで友人たちに秘密をばらしてしまいます。フォン・ベルンブルク先生から皆に内緒で下着をもらっていたのでした。こマヌエラの下着が破れているのを見かねた先生が自分の下着を渡していたのです。さらにマヌエラは、先生を愛していることを堂々と宣言してしまうのでした。
 学校は大騒ぎになります。マヌエラは謹慎処分となり、周囲と口をきくことを禁じられます。追い詰められたマヌエラは飛び降り自殺を図ろうとします。それでも厳格な態度を崩そうとしない院長に対して生徒たちの怒りが爆発。フォン・ベルンブルク先生も院長の冷たい対応に抗議します。その勢いに押された院長は、学院を去っていくのでした…。
 

 ま、ストーリーはそれほど複雑ではなく、“最後は正義が勝つ”的なもの。当時物議をかもしたのは、この映画のレズビアン的要素だったそうです。キャストも監督もオール女性。マヌエラや先生を演じた女優はとても美しく、銀幕によく映えます。非常に面白いのは、この映画が日本に入ってきた経緯。知る人ぞ知る映画輸入業者「川喜多長政」とその妻「川喜多かしこ」さんが新婚旅行でドイツへ行った際、ほとんど衝動買い状態で買い付けたそうです。かしこさんが直感で気に入ったとの話です。半信半疑で買い付けたところ、これが日本で大ヒット。そのことについて、淀長さんがあの名調子で解説したものが残っています → コチラ

 今回、あらためてこの映画をまじまじと眺めたのですが、それほどレズビアンって感じはしなかったのですが…。日本には宝塚の伝統もありますよね。ベルばらのオスカルも人気がありましたし。女性って、美しい女性に憧れますよね。別にレズじゃなくても、美しい女性が好きなのです。うちの娘は女子校に通っていたのですが、低学年が高学年の先輩に死ぬほど憧れてプレゼントを渡したり、体育祭の鉢巻きをもらって大事にしたりってよく聞きます。だから、女性の観客はこの映画も何の抵抗もなく受け入れたんじゃないかなーなんて思うんですけど。レズの映画って定義するほうが不自然に感じるのは私だけ?

 それより、権力で押さえつける教育法や旧態依然とした体制に女生徒たちがみんなで団結して立ち向かう、という姿を書いたことに意義があるような気がします。驚いた顔をして去っていくパグ院長の姿は印象的。製作されたのは、ナチ政権が成立する2年前の1931年。この映画はその後、ナチ政権によって上映禁止にされたとのことです。ドイツ語Wikiからの受け売りで恐縮ですが、上映禁止の理由はレズ的な描写というより、プロイセンの伝統である規律と秩序を否定したところにあるのではないかと。さもありなん。戦後の1947年、FSK によるレイティングが行われたそうですが、とくにR指定などはつかなかったそ~です。


 なお、YouTube で全編見られます。英文字幕入り。もしご興味がありましたら。



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Commented by ka2ka at 2012-04-11 00:49 x
けっして誤訳ではないでしょうが、誤解されやすい(男性には)ドキッとする邦題ですよね。
わたしはマヌエラ役を若きロミー・シュナーダーが演じたリメイク版で見た記憶があるのでYouTubeを検索すると間違いなくありました。
いやーいま見てもドキッとするほどキレイ。女性もこういう映画を見てドキッとするんでしょうか。
Commented by ありちゅん at 2012-04-11 09:49 x
★ka2kaさん おはようございます~。コメントありがとうございます。私も最初、このタイトルを見たときはギョッとしました。しかも、大昔に字幕翻訳を指南してくださった先生から「コレは見ておいたほうがいい」と言われたのですが、「げっ」と最初思ってしまいまして…。ロミー・シュナイダーのリメイク版、私もYouTubeで見ました。キレイですよね。女性からすると、ドキッとするというより、「わ~キレイ~素敵~」といった感覚だと思います。
Commented by esme at 2012-04-11 21:51 x
はじめまして。

私は昭和8年に平原社から発行された対訳本を持っています。
訳者は山根正吉という人でした。
一部引用してみます。

先生が毎晩「お休み」とおつしやつて私のベッドから離れてドアーをお閉めになつた後、私は暗闇の中でドアーを見詰めて居ますの。そうすると、そんな事してはいけないと言ふ事が解つてゐるのに起きて先生のお側へ行きたくなるの、そして私が大きくなると此の學校から出て行かなくてはならないのに、先生は此處に残つていらつしゃつて毎晩ほかの生徒を接吻なさると思ふと。(p61)

ベルンプルグ先生よ。もう私、何もかも構はないわ、……えゝ、先生あそこに居らつしやるわ……先生私がお好きなのよ……私何も怖くないわ、皆が知つちゃつたつて構はないわ、私達の一番好きなベルンプルグ先生、萬歳!(p91・93)
Commented by esme at 2012-04-11 21:52 x
日本公開当時の字幕版は時々小規模な上映会で上映されることがあるようですが、当時の日本語字幕は全部の台詞をカバーしているわけではないようです。

どうも原作者も監督も本物のレズビアンだったらしいのですが、当時としてはこれが表現し得るギリギリだったのかもしれません。
原作の戯曲では、映画と違い、かなり残酷なバッドエンドになっているようです。
邦題からは現代の感覚だと妖しいイメージが湧いてしまいますが、当時は「処女」という言葉が今より広い意味で使われており、「乙女」「清純な少女」程度の意味合いなのでしょう。
Commented by ありちゅん at 2012-04-11 22:37 x
★esme様 はじめまして。コメントをありがとうございます。昭和8年の対訳本をお持ちなんですね!わざわざ引用してくださり、ありがとうございます。寡聞にして知らなかったのですが、原作は戯曲なんですか・・・!昭和8年といいますと1933年ですから、映画が公開された2年後ですね。引用してくださった部分、映画にもありました。私はあまり抵抗もなく読めてしまったのですが、私の感覚がかなりマヒしているのかもしれません…。当時の人たちにとっては、かなり刺激的な内容だったのかもしれませんね。当時の字幕が上映会で上映されることがあるのですか?だとしましたら、是非見てみたいと思います。そうなんですよね、初期のころの字幕は主要なセリフを訳すだけでしたので、現代の字幕に比べるとかなり少ないようです。この「制服の処女」も例外ではなかったと思います。原作では結末が悲劇になっているのですか?どんな結末だったのでしょう?もしよろしければ、教えていただけるととても嬉しいです。
esme様、わざわざ対訳本を書き出してくださいまして、ありがとうございました。非常に興味深かったです。またいろいろご教示くださいませ。
Commented by esme at 2012-04-11 23:51 x
レスありがとうございます。

日本では一般に角川文庫から出ていた中井正文訳『制服の処女』が原作小説ということになっています。
ですが、本当の原作は『昨日と今日』という戯曲のはずです。
では、角川文庫版『制服の処女』の正体は?といいますと、どうやら原作者自身が映画公開後に執筆したノベライズ『少女マヌエラ』(原題失念)らしいのです。角川文庫版の中井正文氏の(かなりテキトーな)解説に、これが原作小説であるかのように書かれているため混乱を招いています。この小説では前半にマヌエラの幼い頃からの描写が追加されていますが、個人的には蛇足と思います。

映画が日本公開された昭和8年には、日本独自のノベライズ『制服の處女』(楢崎勤 著/新潮社)が発行されていますが、映画の魅力をよく表現した素晴らしい本だと思います。かなり売れたらしく、私の持っている本は初版発売後2ヶ月で三十版を数えています。この本の解説中に、原作『昨日と今日』のラスト(マヌエラの死で終る)が訳出されていますので、後日こちらのコメント欄で引用させて頂きたいと思います。
Commented by ありちゅん at 2012-04-12 21:08 x
★esmeさん こんばんは。また詳しい説明を書いてくださいまして、ありがとうございます。この映画はVHSで見てみたものの、その背景などは全く存じませんでした。今、あわててネットで調べてみましたら、ありました!教えてくださった「昨日と今日(Gestern und Heute)」とか、「少女マヌエラ(Das Maedchen Manuela)」とか。ドイツ語のウィキによると、製作にあたったカール・フレーリッヒが、映画化にあたって原作のレズビアン色を薄め、当時の教育方法への批判を前面に出すようにした云々とありました。ありがとうございます!映画ってちょこっと調べると、いろいろバックボーンが出てくるものですが、今回も教えていただいて目からウロコでした。ご親切に、本当にありがとうございます。
Commented by ありちゅん at 2012-04-12 21:10 x
★esmeさん(続きです) ノベライズまであったのですか…!いかに流行ったかが分かりますね。それにしましても、esmeさんお詳しいですね。映画関係のお仕事をなさっているのでしょうか?
Commented by esme at 2012-04-12 23:01 x
以下、新潮社版『制服の處女』解説より引用(解説は福島正氏)。

前にも書いたよやうに、戯曲の結末は、映画とは異なり、マヌエラの死で終つてゐる。つまり、第十二場の校長の部屋で、教育方針に就いての議論が闘はされてゐるとき、マヌエラの死が、ケステン先生に依つて報告されるのである。

ケステン先生 先生、大へんな事になりました。

ベルンブルグ先生 ……もしや……マヌエラが……

ケステン先生 マヌエラが窓から飛び下りました……

校長先生 どうしてまたそんな?……

ベルンブルグ先生 ……まさか死には?……

ケステン先生 死にました。(戸口では、生徒達がしくしく泣いてゐる。)

ベルンブルグ先生 マヌエラ……(急いで外に飛び出す)

校長先生 (打ちひしがれたやうに、一時は)何と公爵夫人に申し上げたら良いだらう。(だが、やがて気を取り直し、ケステン先生に向かって)さうだ、事故が良い……

ケステン先生 左様でございます……
                     幕。
Commented by esme at 2012-04-12 23:09 x
これは残酷な結末です。
『少女マヌエラ』も、マヌエラの死で終るところは同じですが、もう少し救いのある表現になっています(小説では、台詞以外の文章表現が可能なことも大きいでしょう)。
解説の福島正氏は、「マヌエラの墜落は、舞臺には現はれない。それだから、芝居ではこれで良い。映画では、墜落は出し得る。それだから、かへつてそれを避けたのである。これはどちらも甚だ賢明なやり方であらう。」と書いています。
(新潮社版『制服の處女』小説本編は、映画に沿った結末になっています)

※ 言葉が足りませんでしたが、平原社の対訳本は、原作の戯曲ではなく、映画版の対訳です。
  戯曲『昨日と今日』は(上記引用部分を除き)本邦未訳だと思います。
Commented by esme at 2012-04-13 00:13 x
連投失礼します。
引用文、一部修正します。

× 前にも書いたよやうに
○ 前にも書いたやうに

他にもミスがあるかもしれませんが (-_-;)
Commented by ありちゅん at 2012-04-13 22:32 x
★esmeさま こんばんは。解説にあった原作の結末部分を書き出してくださり、ありがとうございました。本からの書き写しはコピペなども使えませんし、大変ですよね。わざわざご丁寧にありがとうございました。「死にました」は悲しいですね…。ドイツ語のウィキによると、カール・フレーリヒがレズビアン色を薄めたとありました。もしかしますと、結末があまりに悲劇的ということで、ここもあえて温和なおのに変えたのでしょうか。いずれにしましても、日本で大ヒットしたと言われる映画の裏に、こんな隠れたエピソードがあったと知ることができてとても興味深かったです。ありがとうございます!もう一度、じっくり見てみたくなりました。感謝いたします。
この「制服の処女」、日本ではヒットしたと聞きます。何が合ったのでしょうか。映画はそれほどどぎつくなく、登場人物が皆さん美しいので、視覚的にもキレイですよね。それも大きかったのでしょうか。
esme様、このたびはご親切にありがとうございました。またどうぞ、遊びにいらしてくださいませ。
by Alichen6 | 2012-04-09 15:03 | ドイツ映画 | Comments(12)