戦後初のドイツ映画 『Die Mörder sind unter uns』

 昨日の日記でチラっとご紹介した、『殺人者は我々の中にいる』を観ました。80分ほどの作品だったので、お昼に40分、夜中に残りの40分を観ちゃいました。ね、眠い…。シリアスな内容ですが、いろいろ興味深い作品でした。

e0141754_23554611.jpg『Die Mörder sind unter uns』(1946年)
Wolfgang Staudte (ヴォルフガング・シュタウテ)監督
Hildegard Knef (ヒルデガルト・クネフ) ズザンネ
Ernst W. Borchert (エルンスト・W・ボーヒャルト) メルテンス医師

<チョ~簡単なあらすじ>
終戦直後、1945年のベルリン。かつて栄華を誇った大都市も、今や瓦礫の山と化していました。強制収容所で生き延びた写真家のズザンネは自分のアパートに戻ってきましたが、そこには知らない男が住んでいました。戦場から戻ってきたメルテンスという医師です。前線での辛い経験によって心に深い傷を負い、自暴自棄になって夜な夜な酒に溺れるメルテンス。そんな2人は壊れかけたアパートで共同生活を始めました。

 ある日、メルテンスは死んだと思っていたかつての上官と再会します。ブリュックナー大尉です。鉄製のヘルメットを鍋に作り替えて売る事業が大当たりし、彼は豊かで幸せな暮らしをしていました。のうのうと暮らすブリュックナーを見て、メルテンスは激しい怒りを覚えます。ブリュックナーはかつて、大勢のポーランド人の処刑を部下に命じていたのです。1942年のクリスマスのことでした。彼の命令で虐殺されたのは男性36名、女性54名、子供31名。いまわしい出来事からちょうど3年経ったクリスマスの晩、メルテンスは犠牲者に代わって復讐すべく、銃を手にブリュックナーの所へ向かうのでした…。(ネタバレになるので、結末は一番下に書きました。ご興味がありましたら、クリックしてくださいませ)

***************************

 「瓦礫映画」の代表作と呼ばれるだけあって、破壊し尽くされたベルリンの町並みが何度も映し出されます。こうした瓦礫の山は、セットでは何度も見たことがあるのですが、実際の映像となると俄然現実味を帯びてきます。かろうじて建っている壁だけの建物。ガラスが割れ、枠だけになった窓。どこまでも続く瓦礫の山。すべて本物。どの風景を見ても、戦争の悲惨さがリアルに伝わってきます…。

 ヴォルフガング・シュタウテは、一貫して左翼的作品を撮り続けた監督だとのこと。また、本作はソ連占領地区で設立された映画会社DEFAによるものです。当然、内容もかなり左寄り。罪のない住民を虐殺する命令を下したナチの将校は、その罪を悔いることもなく、戦後は事業で成功して豊かに暮らしています。ファシズムの罪と資本家…。そういった構図が浮かび上がってきて、何となく見ていてムムム~となりました。詳しくないワタシが偉そうに書くのははばかられるのですが、「ナチの戦争責任」に対する旧東独の考え方が、早くもここに表れているような…(私の解釈が間違っていたらご指摘ください)

 途中、ブリュックナーが手にしている新聞が大写しになります。その新聞の見出しは「200万人がガス室に送られた」といった内容。アウシュヴィッツという単語も見えます。ソ連占領地域に住んでいた人は、1946年の段階では既にこういった内容を知っていたんですね…。

 このDVDを買ったあとに気づいたのですが、YouTube で全編見られます。英文字幕入りです。著作権を侵害していると思われるので、お薦めするのもナンなのですが…。直接貼り付けることができなかったので、飛んでいただく必要がありますが… コチラ

 余談ですが、ズザンネ役のヒルデガルト・クネフがこの作品でブレイク。世界的に有名になったそうで、このあとハリウッド映画にも出演しています。ぬゎんと、ドイツで初めて映画内でヌ~ドになった女優さんだとか。カトリック教会が猛烈に抗議したそうです。



web拍手 by FC2



<結末>

 銃を手にしたメルテンスは、ブリュックナーを殺そうとします。ところが間一髪のところでズザンネが説得、思いとどまらせます。犠牲者に代わって復讐するのではなく、法の裁きに委ねるべきだと。メルテンスはブリュックナーを告発し、彼は刑務所へ。「私は無実だ」とブリュックナーが何度も叫ぶところで映画は終わり。メルテンスも医師としての誇りと使命を思い出し、医療で人を助けようと思い直すのでした…。

 最初の脚本では、メルテンスがブリュックナーを殺すところで終わっていたんだそうです。ところがソ連当局からクレームがつき、法の裁きに委ねる内容に変わったんだとか。市民がナチの犯罪者にSelbstjustiz (私的制裁)を加える風潮が出来てしまうのを怖れたんだそうです。
by Alichen6 | 2011-09-08 08:25 | ドイツ映画 | Comments(0)

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


by Alichen6
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30