『Jud Süß』(ユダヤ人ジュース)
2010年 01月 05日
なぜに「ユダヤ人ジュース」を?と言いますと、実はですね~。先日、「素粒子」のオスカー・レーラー監督が、この映画に出演せざるをえなくなった主演俳優の苦悩を描く(・・・と思われる)新作を撮影中、という記事を読んだからなのです。過去ログは→コチラです。 下に「ユダヤ人ジュース」のあらすじと感想を書いちゃいますね。
<映画 『ユダヤ人ジュース』について>
時は18世紀前半。ユダヤ人ヨーゼフ・ジュースキント・オッペンハイマー(実在の人物です)は、今で言う「闇金業者」。高利貸しってやつです。お金に困った貴族たちに高利で金を貸してのし上がってきた人物です。そしてヴュルテンベルク公爵に取り入り、公国の財務官吏となります。不正に通行税を取り立て、私服を肥やして市民の憎悪の対象に。さらにあくどいことに、アーリア人の人妻に手を出してしまうのです(下品な表現で恐縮ですが、“手込め”にするというヤツです)。そしてこの人妻はショックのあまり、自殺してしまいます。やりたい放題のオッペンハイマーでしたが、後ろ盾となっていたヴュルテンベルク公爵が急死したのち逮捕され、命乞いも空しく絞首刑に処せられてしまいます・・・
プロパガンダ映画というだけあり、悪意を持って史実をかなり歪曲して描いている印象を受けます。登場するユダヤ人はみんな悪人面で、「金の亡者」といったステレオタイプ。見ているだけで嫌悪感を抱くような演出になっております。オッペンハイマーによって死に追いやられた妻の仇を討たんとする夫(当然、アーリア人)が最後に凛とした顔で大写し。モロ、勧善懲悪の世界でした。印籠は出てこなかったけどねっ
私は原作や史実を知らないので、この映画だけを見ると確かに「正義は勝つ!」という印象を受けますです。が、ざざっと検索してみたところ、オッペンハイマーというのはこの映画で描かれたほど悪人ではなかったような気もするのです。金融業で頭角を現し、ヴュルテンベルク公国では公爵のよきアドバイザーとなり、財政再建のために大ナタを振るった模様。そのため、確かに憎悪の対象とはなっていた模様です。このオッペンハイマーに関する本を見つけました。未読なのですが、内容紹介を読む限り、映画で描かれた人物像とは違うような気がする・・・
「消せない烙印 ユート・ジュース」 → コチラ
『一八世紀のユダヤ人金融業者、ヨーゼフ・ジュース・オッペンハイマーの生涯をたどる伝記。その才覚によって権力の中枢へ接近していくジュース・オッペンハイマー。ヴュルテンベルク公爵カール・アレクサンダーに見出されたジュースは、この開明的な君主の財務コンサルタントとして活躍、その栄達を極める。しかし、公爵の急死によって事態は一変。公爵死後の権力闘争に巻きこまれるかたちでジュースは投獄され、罪状も明らかでない裁判によって不当に死刑判決を受け、ついには刑死にいたる。その劇的な生涯を、厖大な歴史的資料に基づいて描き出す。』(リンク先、版元ドットコムの紹介文より引用)