音楽の力
2009年 11月 04日
「家の履歴書」のコーナーは有名人が幼少期から現在にいたるまで住んできた家を紹介するものなのです。でもって、大野氏も子供のころの家から指揮者として活動する際に住んでいた家まで、いろいろ紹介していました。印象的だったのが、ザグレブでの話。90年にザグレブの管弦楽団の音楽監督に就任したそうですが、その翌年からクロアチアは戦火に覆われることになります。戦争がいよいよ激しくなり、本や楽譜といった資産(指揮者にとって、イメージなどを書き込んできた譜面と、それに関係する書籍はかけがえのない財産なんだそ~です)が焼失するのを恐れ、ミラノにアパートを借りたんだそうです。ザグレブでの仕事について大野氏が語ってらした箇所を引用いたしますね(以下、引用):
『爆撃の標的になっちゃいけないから、ザグレブは夜になると灯火管制が敷かれて暗くなる。でも、そんな状況下でも、不思議なことに会場は普段よりもいっぱいになるんです。演奏していると空襲警報が鳴って、第二次大戦以来使われていなかったという5千人収容される防空壕にお客さん、楽団員と一緒にばーっと潜むんですね。それで、空襲警報が解除されると、また戻って演奏するんです。(中略)みなさんひっそりといらっしゃって、熱狂的な拍手をして、またひっそりとかえっていく。』
『そこで思ったのは、人間というのは、本当に困難なときというか人間の尊厳が脅かされたときにこそ、アクセサリーとしてではなく心の底から音楽を聴きたくなるんだなということでした。人間であること、感性を持った動物であることの証明を手にしたいということなんだと思いました』(以上、週刊文春10月29日号より引用終わり)
この記事を読んで思い出しましたのは、第二次大戦時のベルリン・フィルハーモニー。当時の楽団員がドキュメンタリーの中で貴重な証言をしていました。終戦直前のベルリンでは、連日のように空爆が続き、非常に危険な状態だったのだそうですが、そんな中でもベルリン・フィルは演奏会を続けたんだそうです。大野氏がおっしゃっていたことと同様、演奏中に空襲警報が鳴ると演奏をいったんやめて避難をするんだそうです。警報が解除されると、弓を止めたそのところから演奏を再開したんだとか。町中へ出ていくということは、かなり危険だったはずなのに、市民たちはベルリン・フィルの演奏会を聴きに通ったそうです。市民のために音楽を奏でることが楽団員の心の支えとなり、またその音楽に耳を傾けることが市民の心の支えとなったとのこと。これこそ、上の記事にある「人間の尊厳が脅かされたときにこそ、心の底から音楽を聴きたくなる」ということなんでしょうね…
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この日記を書きながら、先日UPしたマイケル・ジャクソンの映画を思い出しました。クラシック音楽とポップスという違いはありますが、音楽を聴くことでパワーがもらえる、生きる勇気をもらえる、という点では同じですよね。アーティスト側から言うなら、音楽を奏でる(歌を歌う)ことでみんなにパワーをプレゼントできる、生きる勇気を持ってもらえるということ。ジャンルは何であれ、音楽はやはり偉大だと改めて思った次第です。