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人間は何を食べてきたか (その2)

 先日の続きでございます。ソーセージに続いて今度はパン。オーストリアのとある農村でのパン作りが取材されておりました。放映されたのが今から24年前。この農村では当時、各農家が自家用のパンを焼いていたんだそうです。パンを焼くのはだいたい2週間に一度。この村はアルプスに近いこともあり、傾斜が多く土地もやせていたために質のいい小麦が育たず、もっぱらライ麦でパンを焼いていたんだそうです。最近(というか、このドキュメンタリーが作られたころ)では町で小麦粉も買えるようになったため、ライ麦粉と半々で焼くようになったとか。Roggenbrot (ライ麦パン)ではなく、いわゆるRoggenmischbrot(ライ麦と小麦のミッシュブロ~ト、ミックスのパン)ですね。放映から四半世紀経った現在でも農家が自家用のパンを焼いているかどうか分からないのですが、このDVDによって古くから伝えられてきた風習を垣間見たような気がしました。だから下で紹介させてくださいっっ

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 パンを焼くのは農家の主婦の仕事。分量の配合や、パン焼き窯にくべる薪の本数、そしてその薪の組み方などは各農家に秘伝の方法があるんだそ~です。このDVDで紹介されていたパンの焼き方について、下でご紹介いたしますね。

<あるオーストリアの農家のパン焼き>
1)4人家族、2週間分のパン → ライ麦粉と小麦粉半々で12キロ用意する

2)大きな桶に粉を入れ、お湯に溶いたイーストを加える(DVD では触れられていなかったのですが、いわゆる生イーストではなく、黒パンに欠かせない Sauerteig (サワー種)だと思われます。酸味が加わるんですよね)

3)種を30分間、桶の中でひたすらこね、1時間寝かせて1次発酵させる。

4)2年間乾燥させたトウヒの薪をパン焼き窯の中で組み上げ、火をつける。番組内で紹介されていたお宅では24本を組み上げるんだそうです。「何度で焼けばいいのか誰も知らないけれど、自分のかまどの中で薪を何本、どのように組めばいいのかは誰でも知っている」というナレーションが入ります。印象深い内容でした。おいしいパンを焼くための秘訣が代々伝えられてきたのでしょう。

5)パンを手で丸~く成形して二次発酵させる。

6)火をつけてから2時間経った段階で薪を崩し、かまど全体に「おき(おきび)」を散らばらせる。かまどの中の温度が均一になるようにするため。

7)トウヒで作った箒で灰や薪の燃えカスをかき出し、パンの生地を入れて余熱で1時間焼いてできあがり❤

8)切り分ける前に、パンの裏側にナイフの刃先を当てて十字を切る。感謝のしるしだそうです。

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 オーストリアの農家を取材したものだったのですが、ドイツとよく似ているな~と思ってしまいました。思い出したのは Anna Wimschneider の Herbstmilch や、ある女性写真家が撮り残したバイエルンの農家の写真で構成されている「Heimatbilder」という本。特に後者の本に出てくる、農家の主婦がパンを焼く記述がほとんど同じでした。この本は20世紀初頭のバイエルンの農家について記したものなのです。ってことは~ 地理的に近いこともあり、オーストリアとバイエルンの自家用パン焼きは似ていたということ。そして20世紀初頭の農家の風習が、少なくとも1985年までは続いていたということですな。ビックリでごじゃります。21世紀となった現在はどうなんでしょう?その後、ドイツ統一もありましたし、農家にも近代化の波が押し寄せているはずです。女性の役割も大きく変わったしなぁ・・・。「おいしいパンを焼くということは、農家の主婦にとって大切な仕事」というナレーションが入りましたし、上に挙げた本でも同様のことが書かれておりました。さすがに21世紀のドイツでは、これは受け入れられないかも・・・。

以下、Albert Bichler 著「Heimatbilder Erinnerungen an das alte Dorfleben」から一部引用させていただきます。ドイツ語だけでスミマセン:
『Das Brot wurde von den meisten Bauern selbst im eigenen Backofen gebacken. Und so war der Backtag - jeweils nach zwei bis drei Wochen - ein herausragendes Ereignis. Hier konnte die Bäuerin - oft war es auch die Grossmutter - ihr Können unter Beweis stellen.』
『Nun kam der Brotvorrat für die nächsten drei bis vier Wochen in die Speisekammer, wo die Brote stehend in eigens dafür geschaffenes Regalen, sicher gegen Mäusefrass, aufbewahrt wurden.』
『Der hohe Respekt gegenüber dem Brot gebot es auch, dass nach altem Brauch ein Laib vor dem ersten Anschnitt auf der Unterseite mit der Messerspitze bekreuzigt wurde.』
↓ パンはこうして専用の棚に立てて保存したそうです。画像はDVD「人間は何を食べてきたか」より。
人間は何を食べてきたか (その2)_e0141754_23252833.jpg

by Alichen6 | 2009-05-06 17:51 | ドイツのこと

日本にいながらドイツする♪  ドイツ・ドイツ語・ドイツ映画を愛してやまない下っ端字幕ほにゃく犬「ありちゅん」が字幕ほにゃく見習い眉毛犬「Milka」と一緒に書く日記


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